◇不可解な教室の番号◇
中国の数字の観念に戸惑うのは日本人だけではないようだ。毎年、9月の新学年、新しく赴任したアメリカ、フランス、スペインなど外国人教師が初めての授業で、自分の教室を探している姿をよく見かける。目的の教室の番号を探して追っていくと番号が一つおきに飛んでいる。廊下の反対側の教室も同じように一つおきになっている。311、313、315、317‥‥。通路の反対側には305、307、309‥‥である。すべて奇数の番号であることには気がつかない。コの字形になっている奥の方に行くと306、308、310と偶数の教室になる。奇数教室の反対の東側には偶数の教室が並んでいる。
奇数と偶数に分かれていることに気がつくまでにかなりの時間がかかる。途中に事務室や教師の休憩室などがあったりすると、“数列”は不規則になる。新任の外国人教師に訊かれて一緒に教室を探してもなかなかたどり着かない。このようなときは授業開始が30分ほど遅れてしまう。遅れた理由を学生に説明して、日中の数字に対する考えが異なることを説明するのだが、学生は奇数、偶数の配列にそれほど違和感はないようだ。
3年前に卒業して日本に留学していた学生が、「日中文化交流会の講師」として講演をする日本の大学の先生を、中国の母校の教室に案内したとき、講演する教室がどこにあるのか探すのに苦労していた。奇数、偶数の配列に慣れているはずの中国人学生でも、母校の教室の番号には戸惑うことがあるのを知ってなんだか少しほっとした感じがした。
◇奇数偶数階で分けるエレベーター◇
南京市内にはここ5、6年の間に30階建ほどのビルが急激に増えてきた。南京で長期滞在を始めた8年前は、20階建以上の建物は数棟あるだけで、かなり目立つ存在だった。初めて中国を訪れた32年前は、南京市内に高い建物はほとんどなかった。改革開放政策30年間で、中国の国内総生産(GDP)は70倍近くになり、現在は世界4位。来年には日本を追い越し、2030年代にはアメリカも抜いて世界一になることが予測されている。
その実質成長率が6年ぶりに10%を下回ったとはいえ、建築ブームはまだ続いている。北京、上海のような高層ビル群が南京市内にも続々と出現している。高層ビルにエレベーターは不可欠のものだが、ここでも奇数、偶数の思想が活かされている。行く先が奇数か偶数かの階数によってエレベーターが違うのだ。ある日、32階に行こうと思って乗ったエレベーターが奇数階行きだった。33階で降りたが、階段が途中で行き止まりになっており32階に行くことができなかった。奇数階からは遇数階行きのエレベーターは止まらないので乗ることはできない。仕方なく1階まで降りて偶数階行きに乗りなおしてやっと32階にたどり着くことができた。
日本では10階止まりとか、11階以上などとなっているエレベーターはあるが、奇数、偶数の階数に分けたものに出会ったことがない。
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