「他人がまだ休んでいるうちに仕事を見つければ、求職圧力が解消できるほか、家族の負担が軽減できると思った」陳さんが抱いた望みはそれだけだった。
今年2月2日、農村政策の制定者である政府高官の陳錫文氏は記者会見で、「金融危機の影響で、沿海部の発展各省の輸出指向型企業が生産困難に陥り、1億3000万人の農民工のうち、約2500万人が失業者になる可能性がある」と語った。
国際労働機関(ILO)は先ごろ、「世界の雇用情勢」という報告書を発表し、世界的な金融危機と経済低迷がこのまま続けば、2009年末までに全世界で失業者が5000万人以上増え、総勢2億3000万人に達する恐れがある、との警告を出した。
事実が表しているように、中国の状況も楽観的ではない。約2000万人の農民工が同時に失業に直面することは、いかなる国にとっても小さな数字ではない。
「ここ数年で農民の給与所得が純収入の約40%を占めるようになったため、農民工の就職者数の減少は、農民の増収難を意味することになる」と陳錫文氏は言う。また、「かなりの農民工が失業して帰郷したあと、彼らの今後の生計をどうするか。これは今年の社会安定に突きつけられた新たな問題だ」と陳錫文氏は直言。
陳錫文氏は、中国政府が直面している最も大きな問題は、今年の農業生産の安定した発展と農民収入の持続的増加をいかに保つかだと見ている。
農民工問題の由来
30年にわたる改革開放の実行で、中国経済は大きな発展をとげた。グローバル化の動きが進む中、中国経済の急速な発展を支えているのは輸出指向型経済と労働集約型産業であり、生産力はほかでもなく、貧しい農村からの余剰労働力だ。
だが、農民工たちは都市部で長年働いてきたが、その身分は依然として「農民」から脱せず、都市部住民と同じような福祉や保障と公共サービスを享受できていない。
初代の農民工たちは加齢によって、ほとんど故郷に戻った。彼らの子女たちは親とともに長年都市部で生活してきたため、すでに農村や農業のことを余り知らない。現在も農村に暮らしている若者も、農業で暮らしを立てようと考える者はほとんどいない。
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