土地の私有化は不可能
陳錫文氏は、「決定」の中では①土地の集団所有権を変えてはならない②農地の用途を変えてはならない③請負農家の権益を損なってはならない、という3つの点が明確にされている、と指摘する。
農村の土地は、法律の規定では農民の集団所有となっており、この「集団」とは1つの村落、1つ1つの村民組織といった集団組織のことで、村のすべての農民が土地所有権を共有している。農民が獲得した土地請負経営権とは、実際には、この集団組織の内部で成立した一種の土地請負関係のことである。この意味から見ると、その集団経済組織に属する成員だけがその集団経済組織の土地を請け負う資格を持っている。
土地流通を促すことの目的は、土地の大規模経営を実現することだ。そして、経営権の譲渡だけで、しかも土地の用途が変わらない状況のもとでの譲渡は、土地の私有化とは本質的に区別される。
陳錫文氏は、「『決定』が打ち出した政策は、長期的で安定した政策を農民にもたらすと予想されるもので、超経済的もしくは強制的に農民を土地から追い出そうというものではない。農民が小さな土地に基本的な安定感を見出し、心を強くして市場に参入できるようにするためだ」と言う。
陳氏はまた、次のように説明する。「経済には周期があり、波があって、低迷期に入れば生産停止や倒産に追い込まれる企業も出てくる。多くの農民労働者にもUターン現象が生じる可能性があり、Uターンしたあと、土地と家があることは保障があるということだ。多くの発展途上国が直面している最大の課題は、土地も家もない農民が都市に流入し、仕事の有無にかかわらず、戻るに戻れず貧民窟が出現し、犯罪が激化し、社会が不安定になるという現象だ。中国はこのような道を辿ってはならない。土地を私有化してはならないということは、農民の土地請負権や家屋敷は担保にはできないという規定があることに示されている。土地の流通はより多く農民同士の間で行われるべきであり、農民がその権利を都市の人に譲渡することを政府は望んでいない」。
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