土地流通で「三大問題」解決
土地流通は決して目新しいことではなく、1984年の共産党1号文書から土地の流通を認め始め、03年3月1日から施行された『農村土地請負法』では特に1節12項目の条項を設けて土地の流通について言及している。
しかし、実際の運用において、各クラスの政府は土地流通業務を真からサポートすることはなかった。共産党中央農村工作指導小組弁公室の陳錫文主任は、10月22日の記者会見の席上、農民の多くは1世帯で0.5ヘクタールほどの土地があるだけなので、流通規模は今のところ大きくなく、全国で5%ほどの土地請負経営権が流通している、と明らかにした。
共産党中央が土地の流通を奨励し始めた理由は何なのか?
陳錫文氏は、農業の生産効率に関する問題を解決するためだという。
ここ何年かで農民の流動就業が増え続け、全国で1億3000万人の農民が故郷を離れ、請け負った土地を離れてほかの場所へ出稼ぎに出ている。労働人口のデータによると、中国の農村では、労働年齢に達した人が約5億人いるが、現在、2億2600万人の農民が農業に従事せず出稼ぎに出ている。農村には老人と女性だけが残っているような状況は、農業の生産、管理に問題をもたらしている。
そこで、土地の流通を奨励し、出稼ぎに出た農民が土地を他人の手に移転させることで農業の生産効率を上げようとする狙いだ。
「三農(農業・農村・農民)」問題の専門家であり、民革中央研究員でもある蔡永飛氏は、この政策は農業の現代化発展戦略に関連していると見る。
蔡氏は、「現在のシステムでは農民は小規模な土地を世帯で経営できるだけで、土地を働き手に集中させるのが難しく、大規模経営など言うに及ばずという状況だ。いま求められている現代農業の発展や農業の総合生産力向上ということは、まとまりのない小さな農地とは相容れない。大規模経営を促すことでしか中国の農業の現代化はできない。そして、農民がさまざまな形で土地の請負経営権を移転するのを認めることで、適度な規模の経営が可能になる」と語る。
さらに同氏は、「土地請負経営権が市場に流通すれば、市場競争を通じて土地の持つ価値が明確に現れ、このことは農民の利益を実現するのにプラスとなるだけでなく、現代農業に対する農民の積極性を引き出すこともできる」と言う。
一方、この政策は都市化を促すためのものだと見る中国社会科学院の牛鳳瑞氏は、次のように語る。「現在、農業の余剰労働力が都市の非農業分野に転出している最中で、都市に入ってきた農民労働者の社会保障問題をうまく解決できずにいる。このため、農民は安易に土地を手放してまで都市に入ろうとはしないので、非農業分野での就業にも限界があり、中国の都市化の発展を制約している。農民が土地使用権を有効に流通させることができれば、土地の保障が現金の保障へと転化し、農村の土地と労働力という二大生産要素がさらに合理的に配置できるようになり、都市化プロセスを促すことになる」。
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