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◇まほらまの南京生活①◇(~ウェンナン先生行状記~)

 

午後から日用品の買物に出かけた。大学正門前からバスに乗る。5、6歳の女の子が車掌の座っていた椅子に座った。車内のキップ売りから戻った女性の車掌は、女の子をとがめるようにして自分が座った。そこは車掌専用の席と書いてあるわけではない。1人用乗客の椅子を車掌用として使っているだけだ。車掌専用の場所ならそれらしくなっているとか、名称を付けた何かがなければならない。何もないのだから、開いた席に座った女の子の判断が正しいと思う。

女性の運転手が席を離れ口論

バスが急ブレーキをかけて突然止まった。右側を走っていたバスと接触すれすれになった。運転していた20歳代半ばの女性が、金切り声をあげて右側のバスの中年男性運転手に文句をつけていた。何を言っているのかまったく聞き取れない。ハンドルから両手を放して相手を指差し、険しい表情で怒鳴っている。10㍍ほど走って赤信号で止まった時は、運転席を離れて反対側の右側の窓から身を乗り出してまた怒っていた。相手の男性運転手は、そ知らぬ顔で黙っている。

運転手が席を離れ口論するのは、彼女の怒髪天を衝く怒りなのだろうが、停車しているとはいえ、乗客を乗せたまま運転席が空席というのは危険このうえない。しかし、乗客は全員平然として座っている。

これまで取材や旅行で中国には15回ほど訪れている。屋台で何回か食事をしたこともある。乗り合いの市内バスも利用している。しかし、それは旅人として、通過したときの一時的な体験にしか過ぎない。一般の“老百姓”とともに生活を始めたこの2日間は、市井の人たちの本音の息遣いが分かるような体験だった。それは、馬をとばして花見をするような「訪中団の旅人」のときにはまったく見えなかった活気あふれる市民生活の一部分でもある。

31年前の南京は林の中にあった

初めての訪中で南京を訪れたのは、31年前の1977年2月である。南京市には2日間の滞在だった。15人ほどの団体で、市内観光、小学校での歓迎会や友諠商店で買い物をした。われわれはどこに行っても、人民服に解放軍の帽子をかぶった中国の人たち100人近くに取り囲まれた。われわれのグループが歩いて移動すると、周囲を取り囲んだ中国の人たちも遠巻きにしながら移動した。当時、胡同や路地裏を見る機会はなかった。だから、南京市内はかなりきれいな街という印象がある。市内の商店街にネオンはほとんどなかった。夜間、車もスモールライトだけを点けて走っていた。全体に暗い街だなあ、と思った。夜間は暗くとも、昼間は、整然とした街路樹が、プラタナス、イチョウ、ヒマラヤスギなど、通りごとにきっちりと種類が分けられ、林の中に街があるオアシスのような感じだった。

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