経済分野で活躍する社会主義の建設者たちが今、政治の舞台へ
本誌記者 黄 衛
1972年、18歳の孫発栄さん(女性、重慶生まれ)は長安自動車グループに勤務。毎日、硬い鋼材をさまざまな形に切る作業を繰り返す単調な日々だった。当時の孫さんが最も愛読した本はソ連の作家ショーロホフの小説「静かなるドン」だ。同作品は20世紀初めドン地方で暮らすコサックの人々が経験した「十月革命」など一連の重大な歴史事件を描いた名作。作者は1965年、これでノーベル文学賞を受賞した。
今年、プロの弁護士となって15年になる孫さんは、重慶市弁護士協会会長の肩書きで中国共産党第17回党大会代表に選ばれ、弁護士業界の代表3人のうちの1人となった。
今回の党大会に出席した2217名代表のうち、孫さんのような「新しい社会層」と呼ばれる代表が内外から注目を集めている。
一つの概念の形成
中央統一戦線部の陳喜慶副部長によると、新しい社会層の形成と成長は改革・開放の深化、経済制度、経済体制、産業構造の変化のたまものだという。「改革・開放以前は、中国社会の基本的社会構造は二つの階級(労働者階級と農民階級)と一つの階層(インテリ層)という認識だった」と同氏は指摘。
2001年7月1日、江沢民氏が中国共産党成立80周年を祝う大会で初めて「新しい社会層」という言葉を使用し、労働者、農民、インテリとは別の新しい社会集団を概括した。
この思想は02年に開かれた中国共産党第16回全国代表大会で明確にされ、新しい社会層の大多数が中国の特色ある社会主義事業の建設者だということが確認された。そして、同大会で中国共産党は党規約を改正し、その他の社会層の先進的な人々が共産党に入党申請することを初めて認めたほか、非国有制企業の党組織の職責を初めて党規約に盛り込んだ。
第16回党大会の報告によると、新しい社会層は改革・開放と社会主義市場経済の発展プロセスで生まれたもので、民営科学技術企業の創業者・技術者、外資企業の管理者・技術者、個人経営者、私営企業主、仲介機関の従業員、自由業の従事者などが含まれる。
新しい社会層という概念は、06年7月に開かれた全国統一戦線活動会議でさらに広がり、明確化された。「まとめて言えば、新しい社会層とは主に、非国有制経済の分野の人々と自由業に就く知識人で構成され、新しい経済機構や社会組織の中に広く存在する」と陳副部長はいう。
今年、中央統一戦線部のウェブサイトでは「非国有制経済界の人々」というコラムが、「多党協力」「少数民族」「宗教」「香港・澳門・台湾と海外」「党外のインテリ」というコラムと並んでスタートした。中央党学校党建設の専門家の葉篤初氏は「これは些細な変化だが、中国共産党が新しい社会層を幅広く受け入れて国の管理・整備に参加させる必要があるということを示している」と指摘。
統一戦線部の関係文書によると、現在、中国の新しい社会層は全国で約5000万人、10兆元の資本を支配、管理し、全国の半数以上の技術特許を使用し、全国の3割近い税金を納付し、全国の新たな就職者の半分以上を毎年受け入れているという。
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