中国では食品の衛生は、80年代から90年代中期にかけて急速に向上し、それ以降は安定しながら向上していった。だが04年以降、一連の深刻な食品の安全をめぐる事件が起きている。あるメディアは、数千年にわたる飲食文化の伝統のある中国は、すでに「食」を論じる面でも変化する時代に入った、と報じたほどだ。
全国工商行政管理総局のデータによると、06年に全国の管理機関が摘発した偽物・劣悪食品は6万8000件にのぼり、製造拠点の捜索は5900カ所に達した。司法機関に送検された重大事件は48件を数える。
しかし、憂慮するのは、“がんになる商品”に関する噂がこの数年増え続けていることだ。有名ブランドの化粧品から各種の食品、さらには衣料品も恐ろしい“がん細胞に感染している”というのだ。
董教授は「言葉を換えて言えば、食品の安全をめぐる隠れたリスクは取り除かれてはいない。類似したパニックになる心理がまだ起きる可能性はある」と指摘する。
原 因
近年、広東省仏山市の中心市区では工業の集約化が進み、一部の陶磁器関連企業をはじめとする汚染業種は次第に農村部へと拡散しつつある。だが農村部では、こうした企業による汚染物排出は往々にして監視するのが難しく、違法な排出、汚水の直接排出が時に発生していることから、当地の50%を超す耕地は程度の差こそあれ汚染されている。なかでも、土壌の金属汚染がとくに深刻で、基準を超えて60%に達したという。
北京市工商行政管理局消費者権益保護処の曹中正処長は、環境汚染以外にも、食品の安全に影響する主要な要素は2つあるとして、(1)栽培や養殖で規定に違反して農薬や動物用薬を使用しているため、農薬の残留が基準を超えた(2)トウガラシ味噌をさらに赤くするため“スダンレッド”を使用したことが一時問題になったように、食品加工の過程で範囲を逸脱または規定に違反して食品添加物を使用している――の2点を挙げた。
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