ダルフール――生態系をめぐる戦争から政治的、外交的戦争へ
ダルフール地域はスーダンの西部に位置し、リビア、チャドおよび中央アフリカ共和国と隣接し、面積は約50万平方キロで、スーダン全国総面積の約5分の1を占めている。この地域はスーダンでも最も貧しく、立ち遅れた地域の1つであり、約80の部落の人たちが暮らしており、主に「アラブ人の部落」と「黒人の部落」という二つの部落に分かれている。前者はラクダを放牧している遊牧部落であり、主にこの地域の北部に集中しており、後者は農業に携わる部落であり、主にこの地域の中央部と南部地区に分布している。歴史上、各部落の間では水源あるいは土地を奪い合うために紛争が起こったこともあるとはいえ、基本的には仲良く暮らしてきた。しかし、20世紀70年代から、干ばつのため、この地域の北部、更にはチャド、モーリタニアなどの隣国から来たアラブの遊牧部落が数多くダルフールの中部と南部地域に移動して水源と草地を探し、この地域の人口が増えすぎることになり、20年前の300万人から現在の600万人にまで増えた。人口が増えすぎたことに干ばつと飢饉が加わり、この地域の生存環境が悪化したため、異なった部落と村落の間に大切な土地と水源を奪い合うための紛争が目に見えて増えた。紛争において勝利者となるため、いくつかの大きな部落はみずからの民兵武装を発展させ始めた。北部のアラブ人の遊牧部落の多くはイスラム教を信仰しているが、中南部の黒人部落の多くがキリスト教と原始宗教を信仰しており、それにアラブ系を主とするスーダンのハルツーム政府はアラブ人に加担する政策を実行し、またここ数年らい、異なる目的から出発した世界の「関心」が加わり、もともと土地と水源を奪い合う生態系をめぐる戦争は宗教と政治的要素の作用の下で、だんだん政治と外交的戦争へと発展した。
|