四、司法能力を向上させる
司法能力を向上させることは、中国の司法改革の重要な目標である。ここ数年来、中国は絶えず法曹業参入許可制度を整備し、職業教育と職業道徳の確立に力を入れ、経費保障体制を改革し、司法能力を効果的に向上させ、司法の信頼性向上のためにしっかりと基礎を固めてきた。
統一的な国家司法試験制度を実施する。中国は国家司法試験制度を確立し、絶えず整備し、初任裁判官や初任検察官、弁護士、公証人の資格試験を国の司法試験に組み入れている。法曹業参入許可としての国家司法試験制度は、法曹の任用資格を規範化し、司法関係者の総合的素養を高め、法曹の職業化を促すうえで重要な役割を果たしている。2002年から年に一度行われている国家司法試験は、国によって統一的に実施され、法曹業参入許可制度の分散から統一への転換を実現した。2011年末現在、全国で50万人近くが国家司法試験に合格し、法曹資格を取得した。
警察の法執行資格等級試験制度を確立する。警察官の能力や素養を向上させるために、国は、すべての正規かつ現職の警察官は法執行資格試験を受けなければならず、試験に合格していない警官は法の執行ができない、と定めている。2011年、173万人余りの警察官が初めての法執行資格試験を受け、そのうち169万人が試験に合格した。
司法関係者の職業教育研修に力を入れる。時代の発展に応え、公衆の日々増加する司法への需要を満たすために、中国はますます司法関係者の職業研修制度を充実させ、司法能力を絶えず高めることを重視するようになった。現在、中央と省レベルの司法機関にはいずれも研修機構を設けて、研修計画を制定し、研修の範囲をすべての司法関係者にまで拡大し、初任必修研修、昇進必修研修、およびさまざまな特別研修制度を確立している。研修においては、学歴志向や理論知識の伝授を主とする従来の研修モデルから転換して、豊富な実践経験と高い理論レベルをもつ裁判官、検察官、警察官を教官に選び、司法業務の実践における重点や難問、新たな情況や新たな問題をめぐって教育研修を行い、絶えず対象性と実用性を強化するようにしている。最近5年間で、全国では裁判官延べ150万余人、検察官延べ75万人、警察官延べ600万人がトレーニングを受けた。
司法関係者の職業道徳確立に力を入れる。司法機関はそれぞれの業務の特徴に合わせて、すべて職業道徳基本準則を制定し、職業信念、職務履行行為、職業規律、職業態度、職業礼儀、職務外行為などの面で、司法関係者の道徳的素養と挙措言動について具体的な要求を示している。2011年以来、司法関係者の間で核心的価値観の教育実践活動を繰り広げ、「忠誠、人民のため、公正、廉潔」を共通の価値観としている。
弁護士の職業道徳確立に力を入れる。弁護士のあいだで「厳格に法に依拠し、信用を厳守し、勤勉に職責を果たし、正義を守る」を中心的内容とする弁護士職業道徳の確立をはかり、弁護士協会による業界自主規制作用を強化し、弁護士の信用執務制度を確立し、弁護士の信用執務に対する評価、監督、および信用違反に対する懲戒システムを整備し、広範な弁護士が当事者の合法的権益や法律の正しい実施、社会の公平・正義を維持するよう責任感を絶えず強め、弁護士業界の職業道徳のレベルと信頼性を高めている。
弁護士が役割を発揮するスペースを拡大させる。中国は国際的な公職弁護士と企業弁護士制度の経験を参考にし、2002年以来、公職弁護士と企業弁護士の試行を進め、政府の政策決定や会社の重大な経営に法的意見を提供し、社会弁護士(専業弁護士と兼業弁護士を含む)、公職弁護士、企業弁護士がともに発展するという弁護士界の構成をさらに整備した。2007年に改正された弁護士法は、弁護士事務所の組織形態を整備し、個人が弁護士事務所を開設することを認め、国家出資弁護士事務所、共同弁護士事務所、個人弁護士事務所がともに発展する構図が形成された。2011年末現在、中国には弁護士事務所が2008年比31.6%増の1万8200ヵ所あり、そのうち、共同弁護士事務所は1万3500ヵ所、国家出資弁護士事務所は1325ヵ所、個人弁護士事務所は3369ヵ所ある。弁護士は合計21万人余りで、そのうち、専業弁護士が89.6%、兼業弁護士が4.5%、企業弁護士、公職弁護士、法律援助弁護士、軍隊弁護士が5.9%を占めている。2011年、全国の弁護士は2008年比24.6%増の39万2000ヵ所で法律顧問を担当し、訴訟案件は2008年比17.7%増の231万5000件を処理し、非訟法律事務は2008年比17%増の62万5000件を処理し、法律援助案件は2008年比54.5%増の84万5000件を引き受けている。
司法経費保障体制を改革、整備する。2008年にスタートした新たな司法体制改革では、「分類による負担、収支の分離、全額保障」という司法機関経費保障体制の確立が明確に打ち出された。中央と省レベルの政府は、司法機関への経費投入を増やし、各級司法機関の経費が財政によって全額保障されることを確保し、末端司法機関の職責履行能力を大いに向上させた。司法機関は、法律に基づき徴収した訴訟費用および科した罰金や没収した不正な収入などをすべて国庫に納入し、収支の分離、罰金決定と罰金徴収の分離を実現し、利益に駆られて不適正な費用や罰金を徴収する現象を食い止めている。国はまた司法機関のインフラ建設の基準と設備配置の指導基準を制定し、執務や案件処理の条件を改善し、情報化・科学技術化のレベルを高め、司法能力の向上のために確実な物的保障を提供している。
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