(四)資源節約型の環境にやさしい社会の構築は着実に推し進められている。
エネルギー資源節約の効果はこれまで以上に高まっている。省エネ・排出削減に関する総合的作業案、省エネ・排出削減の統計、監視、考課に関する実施案や規定を公布し、省エネ・排出削減目標責任制は初歩的に確立された。十大重点省エネプロジェクトは順調に進められ、中央は七〇〇近くのプロジェクトを立ち上げ、標準炭換算で二二五〇万トンの省エネが可能となった。一〇〇〇社の企業を対象とする省エネキャンペーンは全面的に展開され、標準炭換算で二〇〇〇万トン余りのエネルギーを節約した。第二期循環型経済のモデル事業の実施が始動した。省エネ・排出削減に資する財政租税、金融、価格などの諸政策の制定を速め、一部の鉱産物の資源税を調整し、企業所得税優遇策の実施対象とする省エネ・節水、資源の総合利用および環境保護用設備(製品)目録を提出し、政府機関向けの省エネ製品強制調達制度を確立した。電気料金差別化政策の実施が強化され、省エネ発電を優先させるディスパッチ方法のテストがスタートした。改正後のエネルギー節約法を公布、施行し、一部の製品に関するエネルギー効率基準と限度値基準を設定した。省エネ・排出削減に対する取り締まり・検査と宣伝、指導はいっそう強化された。
生態環境の保護と整備は新たな進展をとげた。天然林資源の保護、北京・天津周辺の風砂発生源地域の整備、重点防護林システム及び三江源(長江、黄河、瀾滄江の水源地)自然保護区の整備などの重点プロジェクトは引き続き実施されている。二〇〇三年以来、全国における耕地の林地復元と植林の総面積は三一九一万ヘクタールとなり、牧場の草地復元面積は三四六〇万ヘクタールであった。火力発電、りん酸肥料、鉛・亜鉛など二四の業種に関するクリーン生産評価指標体系が構築され、クリーン生産に対する審査活動は全面的に繰り広げられている。「三つの河」(淮河、海河、遼河)、「三つの湖」(太湖、巣湖、テン池)、三峡ダム地区、松花江、丹江口ダム地区及びその上流区域、また渤海などの重点流域における汚染対策は引き続き実施されている。都市の汚水処理率と生活ゴミ無害化処理率はそれぞれ五九%、五六%に達し、前年に比べてそれぞれ三ポイントと二ポイント上昇した。石炭燃焼発電所の脱硫事業は飛躍的な進展をみせ、さらに一億一〇〇〇万キロワット相当の火力発電設備に脱硫装置が設置され、火力発電設備総容量の五〇%を占めるまでになった。『中国の気候変動対応国家案』を公布した。これは気候変動の対応に関するわが国初の全面的な政策文書であり、発展途上国より公布された気候変動対応国家案第一号でもあり、世界の反響も大きい。
(五)改革開放は積極的に推し進められている。
改革に対する国の全般的指導、統括的調整、総合的配置及び督促・検査がいっそう強められ、重点分野とカギとなる部分の改革は引き続き深化している。農村の総合的改革テストは引き続き広がり、林地の集団所有権制度改革は積極的な成果をあげ、華僑農場の改革は加速し、重要な農業・牧畜業生産物保険の保険料補助テスト作業がスタートした。国有企業の改革はいっそう深化し、国有資本経営の予算制度の試行が始まり、さらにまた一二社の中央企業が国内外で上場し、取締役会のテスト作業が比較的良い効果をあげている。国内企業と外資系企業の所得税制度が一本化され、増値税(付加価値税)の消費型への転換テスト範囲が拡大され、新規の石炭資源の探査権と採掘権の有償取得制度が八の石炭主要生産省で実行された。新しいタイプの農村金融機関のテスト範囲は三一の省・自治区・直轄市に拡大され、中国農業銀行と国家開発銀行は改革に向けて準備作業を積極的に推し進め、中国人寿保険公司、中国太平洋保険公司などの重点国有保険企業は再編、体制転換を経て上場を実現し、中国投資有限責任公司が創設された。人民元相場の弾力性が一段と強まり、為替制度改革の実施に踏み切った二〇〇五年七月の時点に比べて、二〇〇七年末時点の人民元対ドル相場の切り上げ幅は一三・三%に達した。科学技術体制の改革はいっそう深化し、第二期の創造革新型企業のモデル事業が発足した。投資体制の改革は積極的に推し進められている。精製油、天然ガスの価格改革は着実に進められ、都市の熱供給価格の改革は速まっている。行政審査・許認可項目は引き続き減少している。包括的な改革のテスト作業は着実に進んでいる。非公有制経済の発展を奨励、支持、誘導する関連措置は絶えず充実化されている。
開放型経済のレベルは引き続き向上している。通年の輸出入総額は二兆一七三八億ドルで、前年比二三・五%増となった。輸出入品の構成は引き続き改善され、機電製品、ハイテク製品の輸出はそれぞれ二七・六%、二三・六%伸び、「両高一資」製品(高エネルギー消費・高排出及び資源関連の製品)の輸出過熱が初歩的に抑えられた。新たな『外商投資産業指導目録』が公布、施行され、金融分野以外の外商直接投資の年間実質利用額は七四八億ドルに上り、前年に比べて一三・六%伸びた。外商投資構造は適正化しつつあり、西部地区と東北地区の実質外資導入額の伸び率はそれぞれ六〇%と七〇%を上回った。金融、商業、電信などの分野は開放を引き続き拡大し、第三次産業の実質外資導入額は四七%増となり、その割合が一〇ポイント上がった。国の外貨準備高は一兆五二八二億ドルに達した。企業の対外投資提携は新たな一歩を踏み出し、通年の対外直接投資額(非金融部分)は一八七億ドルに上り、前年に比べて六・二%伸びた。
(六)民生の改善と調和の促進には明らかな成果がみられた。
教育の発展を優先させる仕事は積極的な進展をとげた。農村の義務教育経費保障メカニズムは全面的に実施され、農村の義務教育段階における学費・雑費の全額免除と国家カリキュラム教科書の無料提供によって、一億五〇〇〇万人近くの農村小中学生に実益をもたらした。中央は三〇億元を投入し、農村の寄宿制学校整備プロジェクト、中西部農村における中学校の校舎改築プロジェクト及び農村小中学校の現代遠隔教育プロジェクトの実施に充てた。西部地区における「二つの基本」(九年制義務教育の基本的普及と青・壮年の非識字者の基本的一掃)の難関突破計画は期限通りに達成され、「二つの基本」の全国人口カバー率は九九%を上回った。
中央は二一億元を投入し、職業教育実践訓練基地、高等職業教育モデル校、中等職業学校と県職業教育センターの整備を支援し、中等職業教育の生徒募集規模は八〇一万人に達した。国の奨学金・学資援助金制度はいっそう健全化し、教育部直属師範大学の師範系学生向けの学費免除制度のテスト作業がスタートした。高校段階の粗入学率は六六%、高等教育の粗入学率は二三%となった。
都市農村住民をカバーする多層的医療衛生サービス体系の整備は加速している。資金を二七億元拠出して、二五〇二の郷鎮衛生院と五一四の県クラス医療機関の整備を支援し、一万一七〇〇の郷鎮衛生院に医療器械を配備した。全国における九八%の地区クラス以上の都市、九三%の市所轄区及び半数以上の県クラス市が、コミュニティー医療衛生のサービスを繰り広げた。計画出産事業は引き続き強化され、人口の低出産レベルが定着し、人口の自然増加率は五・一七‰であった。
文化、観光、スポーツなど諸事業の発展は加速している。給電戸数が二〇世帯を超える自然村のラジオ・テレビ関連施設の整備、チベット・新疆プロジェクト第四期建設がスタートし、ラジオとテレビの全国総合カバー率はそれぞれ九五・四%と九六・六%に達した。郷鎮総合文化センター整備モデル事業と文化情報リソース共有プロジェクトがスムーズに進展している。国家大劇場が完工して運営に入り、国家図書館第二期、国家話劇院、国家博物館の改築・増築など重点文化プロジェクトの建設も急速に進んでいる。文化と自然遺産の保護は強化された。報道出版、文学芸術、哲学・社会科学などの事業は繁栄し、発展している。赤色観光(中国革命の史跡を巡るパックツアー)の重点観光地のインフラ施設が一段と整備された。国内観光者数と海外旅行者数は前年に比べてそれぞれ一五・五%と一八・六%伸びた。全国民の健康増進と「五輪同行」活動が大々的に繰り広げられ、都市・農村部における公共スポーツ施設の整備が速まり、三六の五輪競技場がすでに完工した。
人民大衆はより多くの実益を得た。農村住民一人当たりの純収入と都市部住民一人当たりの可処分所得の実質伸び率はそれぞれ九・五%と一二・二%となった。消費構造のグレードアップが加速し、自動車、観光、通信、健康増進などの分野の消費熱が引き続き高まっており、安価賃貸住宅と売価限定の分譲住宅の建設が速まった。都市部就職者の新規増加数は一二〇四万人で、年末時点の都市部登録失業率は四%であった。社会保障のカバー範囲がいっそう拡大し、都市部基本養老保険の加入者数は前年より一三四一万人増え、企業の定年退職者の年金額はかなり大幅に引き上げられた。都市部住民基本医療保険のモデル事業は八八の都市で相次いでスタートし、加入者数は四〇六八万人に上り、二四六一の県(市、地区)で都市医療救助制度が確立された。新しいタイプの農村合作医療への加入者数は七億三〇〇〇万人に上り、すでに全国の八六%の県に広がっている。農村の最低生活保障制度が全面的に確立された。公共事業の労務提供による救済事業と貧困脱却扶助・開発事業は著しい成果をあげ、移住による貧困脱却扶助のテストで二五万五〇〇〇人の貧困者が転住を果した。豚肉、食糧、食用植物油及び教育、医療、住宅などの商品とサービスの価格検査が展開され、「価格サービスを隅々まで徹底させる」活動が推し進められ、都市・農村をカバーする価格監督サービスネットワークが初歩的に構築された。
代表のみなさん、昨年の成果は改革開放以来の多年にわたる諸般の活動を踏まえて収めたものである。過去の五年間は並々ならぬ五年間であり、わが国の経済・社会発展の諸分野はいずれも新しい局面を切り開き、改革開放と小康社会の全面的建設は重要な一歩を踏み出し、社会生産力、総合国力及び民衆の生活レベルは新たな段階に上がり、国際的地位も目に見えて高まっており、発展パターンが逐次転換され、発展の潜在力が絶えず向上し、発展の活力がいっそう高まっている。この時期は、わが国の歴史においても最も良好な発展期の一つとなり、経済・社会発展の第三段階の戦略目標実現に向け確固たる基礎が打ち固められた。この五年間たどってきた道のりを振り返ると、この成果の獲得は生易しいものではなく、それは党中央と国務院の科学的な政策決定や、力強い指導のたまものであり、各地区、各部門が心を合わせて協力し、着実に仕事に取り組んだたまものであり、全国各民族人民が発奮して強きを求め、刻苦奮闘したたまものである、ということをわれわれは身にしみて感じている。
われわれはこれらの成績を見て取ると同時に、前進途上にかなりの困難と問題が存在しているということも冷静に見て取っている。国際的にみれば、アメリカの低所得者向け高金利住宅融資(サブプライムローン)問題の主な経済体に対する影響はなお広まっており、ドル相場が持続的に下落し、国際市場で原油、鉄鉱石、銅、穀物など一次産品の価格が高止まりし、ひいては上昇を続け、世界経済はさらに動揺を深め、国際競争がいっそう激化し、わが国に対する貿易保護主義が一段と強まっている。国内をみれば、経済構造と発展パターンの不合理、体制やメカニズムの未完備など深層部の問題はまだ根本的に解決されておらず、自主的創造革新の能力が弱く、経済の成長で払った資源と環境の代償が余りにも大きく、都市と農村や地域間、経済・社会の発展には依然ばらつきがある。当面、経済の安定した運営を制約する矛盾や問題も多くあり、なかでも際立ったものは次の通りである。一、過度の経済成長が過熱に転じるリスクを無視してはならない。投資の膨張圧力はかなり大きく、通年の全社会固定資産投資は二四・八%増となり、依然として高い水準にある。多くの地方は今なお強い投資意欲に駆られ、新規着工のプロジェクトが多く、規定に違反したプロジェクトも少なくない。マネーサプライや貸出が急速に拡大している。貿易黒字はなお拡大を続けている。二、物価の上昇圧力はたいへん大きい。住民消費価格総水準は持続的に向上し、年間の伸び幅が四・八%となり、年初に確定された三%以内という所期目標を超えた。国際市場では重要な一次産品の価格は上昇の一途をたどり、国内に与えた直接的な影響はかなり大きい。生産財の価格は急ピッチで上昇し、住宅の価格は続騰している。三、省エネ・排出削減の情勢は依然として厳しい。重工業、特に「両高」(高エネルギー消費・高排出)業種の成長が速すぎ、省エネ・排出削減を促す体制・メカニズムと政策措置が完備されておらず、企業は進んで立ち遅れた生産能力を淘汰する意欲に欠け、汚染対策施設の整備が追いつかず、監督や処罰が不十分で、法律法規に違反した汚染物質排出の行為がまだ至る所に見受けられる。四、農業の安定した発展と農民の収入増を図ることが益々難しくなっている。農業基盤が依然として弱く、耕地の保護は巨大な圧力に直面し、農業に対する資源・環境と市場の制約が強くなり、農産物の需給均衡を保つための圧力が大きくなっている。農民の非農業部門への就業転換にはなお体制的な障害が存在し、農村における公共サービス能力の整備が立ち遅れている。五、民生分野で早急に解決すべき問題がかなり存在している。就業の圧力は依然として大きく、教育、文化、医療衛生など基本的な公共サービスはなお人民大衆の需要に十分に応えられていないし、社会保障、所得分配、住宅確保、製品の品質・安全、安全生産、社会治安などの面において少なからぬ問題が存在している。今年一月中旬以来、わが国の南方地区は低温・雨・雪・結氷による災害に見舞われ、これによって人民大衆の生命、財産及び工・農業生産はゆゆしい損失をこうむり、災害後の復旧任務はかなり重いものとなっている。上述の問題に対して、われわれは積極的に措置を講じ、真剣に解決する。
|