六、エネルギーと環境の調和的発展を推進する
気候変動は国際社会があまねく関心を寄せる重要なグローバルな問題である。気候変動は環境問題でありながら、発展にかかわる問題であり、つまるところ発展にかかわる問題である。エネルギーの大量開発や大量利用は、環境汚染と気候変動を引き起こす主な原因の一つである。エ lルギーの開発利用と環境保全、気候変動の関係をりっぱに処理することは、世界各国の差し迫った課題である。中国は工業化の初期段階にある発展途上国であり、歴史上の累積排出量は少ない。1950年から2002年まで、中国の化石燃料による二酸化炭素排出量は同期間の世界の排出量の9.3%に相当するだけで、一人当たりの二酸化炭素排出量は世界第92位で、単位GDPの二酸化炭素排出の弾性係数もわずかであった。
中国は責任ある発展途上国として、環境保全と世界の気候変動を高度に重視している。中国政府は環境保全を基本的国策の一つとし、『国連気候変動枠組条約』(UNFCCC)に調印し、国家気候変動対策協調機構を設置し、『気候変動初期国家情報通報』を提出し、『クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクト管理法』を公布し、「中国気候変動対応の国家方案」を制定すると同時に、環境保全と気候変動に関する一連の対策や措置をとった。中国は第11次五ヵ年計画期間に、生態環境悪化の趨勢を基本的に食い止め、主要汚染物の排出総量を10%削減し、温室効果ガス排出抑制に成果を上げるという目標を掲げた。中国は経済構造やエネルギー構造を積極的に調整し、省エネを全面的に推し進め、際立った環境汚染問題の予防処理に重点を置き、汚染物の排出を効果的に抑制し、エネルギーと環境の調和的発展を推進している。
――温室効果ガス排出を全面的に抑制する。中国は経済発展パターンの転換を加速させ、気候変動緩和のために省エネやエネルギー構造最適化の役割を積極的に果たし、化石エネルギー消費の削減に力を入れる。循環経済を大いに発展させ、資源の総合利用を推し進め、エネルギー利用の効率を向上させ、温室効果ガスの排出を削減する。科学技術の進歩に依存して、気候変動への対応力をたえず高め、地球環境の保全に積極的に寄与する。
――生態破壊と環境汚染の防除に大いに力を入れる。中国はエネルギー特に石炭のクリーン利用をいっそう重視し、さらにそれを環境保全の重点とし、生態破壊と環境汚染を積極的に防除する。石炭採掘による地盤沈下地域の整備や炭層ガスの開発利用を加速させ、石炭資源開発メカニズムと生態環境復元補償メカニズムを構築し、健全化させる。石炭の秩序ある採掘を推し進め、高硫黄分・高灰分石炭の採掘を制限し、放射性物質や砒素などの有毒・有害物質の含有量が規定基準を超過した石炭の採掘を禁止する。クリーン石炭技術を積極的に発展させ、石炭の洗鉱・選鉱、加工 E転化、クリーン燃焼、煙道ガス浄化などの技術の利用を奨励する。石炭燃焼発電所における脱硫施設の整備を速め、新設された石炭燃焼発電所は排出基準に基づいて脱硫装置の取り付けと使用を義務付け、現有の石炭燃焼発電所は脱硫施設の整備を加速させる。大中都市や近郊においては、発電だけの石炭燃焼発電所の新設を厳禁する。
――自動車の排出ガスによる汚染を積極的に防除する。自動車工業の発展や国民生活レベルの向上に伴い、中国の自動車保有台数は急速に増え、排出ガス汚染の防除が環境保全の重要な内容となった。中国は有効な施策を積極的に講じ、自動車の排出基準を厳格に実施し、生産段階で環境保全基準に適合しているか否かの検査を強化し、生産された新車の基準達成を保証する。環境保全のために稼動車の年1回の車検制度を厳しく実施する。排出基準を超過する自動車の製造・販売・輸入を厳禁する。汚染の低いクリーン燃料車の生産・使用、混合動力自動車の生産を奨励し、軌道交通や電動バスの発展をサポートする。
――エネルギープロジェクトによる環境影響への管理を厳しくする。エネルギープロジェクトによる環境影響への管理を厳しくすることは、エネルギー建設と環境保全の調和的発展を実現するための有効な施策である。中国は環境アセスメント制度を着実に実行し、環境調和型事業許可制度の厳格な運用により粗放型経済の成長を抑制する。新築や増築、改築のエネルギープロジェクトの建設と環境保全施設を同時に設計し、施工し、使用する。原子力発電プロジェクトの安全管理を強化し、運行中の原子力発電所、研究炉、原子力燃料リサイクル施設の安全や輻射環境に対する監督管理を強化し、建設中の原子力発電施設の安全に対する評価・監督をきちんと行う。建設中の水力発電所の生態環境保全にいっそう力を入れ、河川流域の総合的な開発利用を満たす条件のもとで、保護の中で開発し、開発の中で保護し、水資源の総合的な利用と生態環境に与えるプラスの効果を重視する。
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