五、国際交流と協力
中国政府は、宇宙空間は全人類の共同の富であり、世界各国はいずれも宇宙空間とその天体を自由に探究、開発、利用する平等な権利があり、世界各国の行う宇宙活動は各国の経済発展と社会進歩、人類の安全・生存・発展、各国人民の友好的協力に役立つべきであると考えている。
宇宙をめぐる国際協力は、国連の「宇宙空間を探究、利用する国際協力を展開して、すべての国の福祉と利益を促進、特に発展途上国の必要を考慮しなければならないことに関する宣言」(「国際宇宙協力宣言」)の中で打ち出された基本的原則に従うべきである。中国は、平等互恵、平和利用、共同発展の原則をふまえて、宇宙空間分野の国際交流と協力を強化すべきだと主張する。
基本的政策
中国政府は国際宇宙交流と協力を展開するにあたって、次のような基本的政策をとっている。
―独立自主の方針を堅持し、国の現代化建設の必要に応じて、内外という2つの市場と2種類の資源を合理的に利用し、積極的かつ実務的な国際協力を展開することを統一的に考慮する。
―国連系統内で宇宙空間の平和利用についての各種活動を展開するのを支持する。政府間または非政府間の宇宙機構が宇宙技術、宇宙応用、宇宙科学の発展を促進するために展開する各種の活動を支持する。
―アジア太平洋地域の地域的宇宙協力を重視し、世界のその他の地域的宇宙協力を支持する。
―発展途上国との宇宙協力を強化し、先進国との宇宙協力を重視する。
―国内の科学研究機関、工業企業、大学、社会団体が国の関係政策と法規の指導のもとで、多段階、多形式の国際宇宙交流と協力を展開することを奨励、支持する。
主な活動
過去5年間に、中国は多くの国と二国間の国際宇宙協力を行い、前後して13の国、宇宙機関、国際機構と16件の国際宇宙協力協定または了解覚書に調印し、アジア太平洋地域の宇宙技術とその応用分野の多国間協力と当該地域の宇宙協力組織化の進展を促進した。国連およびそれと関係ある国際機構の展開する関係活動に参与し、国際宇宙商業活動を支持し、積極的な成果をあげた。
1、二国間の協力。過去の5年間に、中国はそれぞれアルゼンチン、ブラジル、カナダ、フランス、マレーシア、パキスタン、ロシア、ウクライナなどの国および欧州宇宙機関、欧州委員会と宇宙空間平和利用に関する協力協定、宇宙空間プロジェクトの協力取り決めに調印し、そのうち、ブラジル、フランス、ロシア、ウクライナなどの国と宇宙航空協力の小委員会または合同委員会の協力体制を構築し、インド、イギリスなどの国の宇宙航空機関と宇宙協力了解覚書に調印し、アルジェリア、チリ、ドイツ、イタリア、日本、ペルー、アメリカなどの国の宇宙航空機関と交流を行った。
中国は引き続きブラジルと地球資源探査衛星協力を行っている。2003年10月、中国とブラジルが地球資源を探査する02衛星を成功裏に打ち上げたあと、中国とブラジルの両国政府はさらに地球資源探査衛星02B衛星、03衛星、04衛星の共同開発製作およびデータ応用システム協力などの補充議定書に調印し、中国とブラジルの地球資源探査衛星のデータの連続性を継続保持するとともに、同衛星のデータの地域と世界範囲における応用を拡大した。
中国とフランスは宇宙空間分野で広範な交流と協力を行っている。中仏宇宙航空合同委員会の協力メカニズムのもとで、双方は宇宙科学、地球科学、生命科学、衛星応用、衛星による観測・制御などの分野における交流と協力の面で重要な進展をとげた。
中国とロシアは宇宙空間分野で効果に富む協力を行っている。両国総理定期会見委員会宇宙航空協力小委員会の枠組みのもとで長期協力計画が確立された。このほか、宇宙飛行士の養成などの有人宇宙飛行の面でも交流と協力を展開している。
中国とウクライナは宇宙空間分野で交流と協力を行っており、中国・ウクライナ宇宙航空合同委員会の協力メカニズムのもとで、双方は協力計画を確定した。
中国と欧州宇宙機関は中国とヨーロッパが協力する「地球宇宙空間双星探測計画」を実施している。中国の関係部門は欧州宇宙機関と地球観測分野の「ドラゴン計画」協力を行っており、農業、林業、水利、気象、海洋、災害などの分野で、16件の遠隔探査応用プロジェクトの協力を展開している。
2、多国間協力。2005年10月、中国、バングラデシュ、インドネシア、イラン、モンゴル、パキスタン、ペルー、タイの8カ国政府の代表が北京で「アジア太平洋宇宙協力機関(APSCO)公約」に調印し、さらに2006年6月、トルコ政府の代表も同公約に調印した。同機関本部は北京に設置される。これはアジア太平洋宇宙協力機関が正式成立に向かって重要な一歩を踏み出したことを示している。
中国は「アジア太平洋地域の多国間協力の多用途小型衛星」プロジェクトを引き続き推し進めている。中国がバングラデシュ、イラン、韓国、モンゴル、パキスタン、タイなどの国と共同で多用途小型衛星を開発、製作、応用しており、同衛星は2007年に打ち上げる予定である。
中国は国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)およびその傘下の科学技術小委員会と法律小委員会の各種活動に積極的に参加し、国連の制定した「宇宙条約」「宇宙救助返還協定」「宇宙損害責任条約」と「宇宙物体登録条約」に加入し、関係責任と義務を厳格に履行している。
中国は国連宇宙空間平和利用委員会が第3回国連宇宙会議(UNISPACEIII)の各件の提案を実行に移す関係活動に積極的に参与し、特に中国がカナダ、フランスとともに共同議長国として、国連宇宙空間平和利用委員会の40の加盟国と15の国際機関の参加した「宇宙システムを利用して防災と災害管理行動グループ(第7行動グループ)」の活動を推進するとともに、国連宇宙空間平和利用委員会の「防災と災害管理協調メカニズムの実行可能性を研究する特設専門家グループ」の活動にも積極的に参加している。
中国はすでに多くの国の宇宙空間機関からなる「重大な自然災害または技術災害の中で宇宙施設を協調して利用する協力憲章」の防災メカニズムに加入した。中国は国連と協力して、中国で「国連・欧州宇宙機関・中国基礎宇宙科学講習会」と「国連・中国・アジア太平洋地域の遠隔医療発展講習会」を開き、また何回もアジア太平洋地域宇宙空間多角的協力秘書処、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)などと協力して、中国で宇宙技術応用に関する研修会とシンポジウムを開き、中国は資金を出してこれらの活動を支持した。中国は国連アジア太平洋経済社会委員会の実施したアジアおよび太平洋地域の宇宙応用と持続可能な発展計画にも参与した。
中国は国際機関間宇宙デブリ調整委員会(IADC)のさまざまな活動に積極的に参加し、中国「宇宙デブリ行動計画」を始動させ、宇宙デブリ研究分野の国際交流と協力を強化している。また、国際地球観測衛星委員会(CEOS)の関係活動に参与するとともに、2004年11月、主催国として、北京で「国際地球観測衛星委員会第18回総会および20周年祝典」を開催した。2005年5月、中国は国際地球観測グループ(GEO)の正式な加盟国となり、その執行委員会に入った。2006年7月、北京で「第36回世界宇宙科学大会」「第8回国際月面探査利用会議」が開催された。中国はまた国際電信連盟(ITU)、世界気象機関(WMO)、国際宇宙航空連合会、国際宇宙空間研究委員会(COSPAR)などの宇宙機関の関連活動に参与した。
3、商業活動。2005年4月、「アジア太平洋6号」通信衛星の打ち上げに成功した。2004年12月、中国はナイジェリアと通信衛星商業契約を結び、ユーザーに衛星の軌道上引き渡しサービスを提供した。2005年11月、中国はベネズエラと通信衛星商業契約を結び、ユーザーに衛星の軌道上引き渡しサービスおよびそれにマッチする地上応用施設を提供した。
優先する分野
中国政府は、宇宙技術、宇宙応用、宇宙科学などの分野で国際交流と協力を行うことを引き続き支持し、今後5年内に、以下の諸分野で国際協力を優先的に展開する。
―宇宙天文、宇宙物理、微小重力科学、宇宙生命科学、月面探査と惑星探査など分野の科学研究。
―地球観測衛星データの共同享有とサービス。資源調査、環境モニタリング、災害の防止と減少、地球変化のモニタリングと予報など方面での応用と研究。
―宇宙航空観測・制御ネットの資源の共同享有、宇宙航空観測・制御の支持の相互提供など。
―通信衛星と地球観測衛星の設計と製作。
―衛星による通信、衛星による遠隔探査、衛星による航行誘導と位置測定の地上設備およびカギとなる部品の製造。
―衛星による通信・放送の遠隔教育、遠隔医療などの面の応用および衛星による放送、テレビの応用範囲の拡大、衛星による航行誘導と位置測定の関連サービス。
―衛星の商業的打ち上げサービス、衛星とその部品の輸出、衛星の地面観測・制御と応用施設の建設およびそのサービス。
―宇宙航空活動各分野の人員交流と養成。 |