中華人民共和国国務院報道弁公室
2004年9月・北京
前書き
社会保障は現代国家の最も重要な社会経済制度の一つである。経済発展レベルに適応する社会保障システムを確立、整備することは、経済と社会の協調的発展の必然的な要求であり、また社会の安定と国の長い将来にわたる安定の重要な保証である。
中国は世界最大の発展途上国であり、人口が多く、経済発展の起点が低く、地区間と都市・農村間の発展がアンバランスであり、そのため、社会保障システムを整備するのは困難に満ちた重い任務である。
中国政府は自国の国情から出発し、あくまで人を本として、社会保障システムの確立と整備を高度に重視し、それに大いに力を入れている。「中華人民共和国憲法」は、国は経済発展レベルに適応する社会保障制度を確立し、健全にすると明確に規定している。中国政府は経済発展を人民生活向上と社会保障実現の基本的前提としている。
1978年の改革・開放以前では、中国は長期にわたり計画経済体制に適応する社会保障政策を実行し、国民に各種の社会保障を最大限に提供した。1980年代中期以降、社会主義市場経済体制の確立と完備に伴って、中国は計画経済期の社会保障制度に対し一連の改革を行い、市場経済体制に適応し、中央政府と地方政府が分担する社会保障システムの基本的枠組みを徐々につくり上げた。
中国の社会保障システムは社会保険、社会福祉、優待慰撫と配置、社会救助、住宅保障などが含まれている。社会保険は社会保障システムの核心部分であり、養老保険、失業保険、医療保険、労働災害保険、出産保険が含まれている。
一、養老保険
中国はすでに老齢社会に入っており、老齢化の進み方が速く、老齢人口が多く、2030年代に人口老齢化はピークに達する。老人の基本的生活を保障し、老人の合法的権益を守るため、中国政府はたえず養老保険制度を整備し、基金調達方式を改革し、多段階の養老保険システムを確立し、養老保険制度の持続可能な発展の実現に努めている。
都市部従業員の基本的養老保険制度建設を強化
――都市部の企業で働く従業員の基本的養老保険制度を改革する。1997年、中国政府は全国の都市部の企業で働く従業員の基本的養老保険制度を統一し、社会統一プールと個人口座の結合を実行した。企業の従業員は法定の停年退職年齢(男性従業員は満60歳、女性幹部は満55歳、女性労働者は満50歳)に達し、しかも個人が保険料を満15年納付した場合、停年退職後は月ごとに基本的養老金を受け取ることができる。基本的養老金は主に定額養老金と個人口座養老金からなり、定額養老金の月間基準額は当地従業員の前年度の毎月の平均賃金の20%前後に相当し、個人口座養老金の月間基準額は本人の個人口座(本人の賃金の11%)の累計貯蓄額の120分の1である。政府は都市住民の生活費用価格指数および従業員の賃金増加状況を参照して、基本的養老金のレベルを調整する。2003年、企業の保険に参加した停年退職者の毎月の基本的養老金は平均621元である。
――基本的養老保険の適用範囲を拡大する。中国の基本的養老保険は最初は国有企業と都市部の集団企業で働く従業員だけに適用していたが、1999年から、その適用範囲は外資企業および都市部の私営企業とその他の企業で働く従業員にまで拡大された。各省、自治区、直轄市はそれぞれの実情に応じて、都市部の個人経営者を基本的養老保険の適用範囲に入れることができる。2002年、中国は基本的養老保険の適用範囲を都市部の流動就労者に拡大した。2003年、全国の基本的養老保険参加者数は1億5506万人に達し、そのうち、従業員は1億1646万人である。
――基本的養老保険制度を整備する改革を試行する。2001年から、中国政府は基本的養老保険制度を整備する改革の試行を始めた。それには主に個人口座をちくじ開設し、基金の部分的蓄積を実現し、基金の価値維持と価値増大の方法を模索すること、定額養老金の計算・支給方法を改革し、定額養老金のレベルを従業員の保険料納付年限といっそう密接に結び付け、従業員が保険料を15年間納付したあと、1年多く納付するごとに、一定の比率で定額養老金を追加支給すること、流動就労者の保険料納付方法を統一し、保険料納付基数を当地従業員の平均賃金に統一し、納付比率を20%に統一することが含まれている。遼寧省で試行してから、2004年に試行の範囲を吉林省、黒竜江省に拡大している。
――機関と事業体の停年退職制度改革を模索する。中国の国家機関および事業体で働く人員の停年養老制度は企業のと異なっている。2003年、機関と事業体の引退休養者は67万人、停年退職者は931万人に達した。1990年代から、一部の地区は機関と事業体の停年退職制度の改革を模索し、停年退職金の社会統一プールの改革を試行し始めた。2003年末現在、社会統一プールに参加した従業員は1199万人、引退と停年退職者は258万人に達した。
さまざまなルートを通じて基本的養老保険基金を調達
人口の老齢化が速くなり、停年退職者が絶えず増える背景の下で、中国の基本的養老保険基金支給の圧力はますます大きくなっている。基本的養老金の期限どおりの全額支給を確保するため、中国政府はさまざまなルートを通じて基本的養老保険基金を調達している。
――企業と従業員が共に保険料を納付する。企業が納付する保険料の金額は企業の賃金総額の20%を越えず、具体的比率は各省、自治区、直轄市の人民政府が定め、従業員は本人の賃金の8%で保険料を納付する。都市部の個人経営者および流動就労者が基本的養老保険に参加する場合、本人は当地の平均賃金の18%前後に相当する保険料を納付する。2003年の全国企業の基本的養老保険料の納付総額は2595億元に達した。
――基本的養老保険基金に対する財政補助金を増加する。国は、各級政府が財政支出構造の調整に大いに力を入れ、社会保障への投入を増加すると規定している。2003年、各級財政は基本的養老保険基金に544億元を補助し、そのうち、中央財政の補助金は474億元である。
――全国社会保障基金を設立する。2000年に、中国政府は全国社会保障基金の設立を決定した。全国社会保障基金の出所は、国有株の保有を減らして得た資金および株主権の資産、中央財政から支出する資金、国務院の認可を得てその他の方式で調達した資金および投資収益などがある。全国社会保障基金は全国社会保障基金理事会によって管理され、「全国社会保障基金投資管理暫定規則」の定めた手続きと条件に基づいて市場化運営を実行する。全国社会保障基金は養老保険など各種の社会保障を実施するための重要な財力備蓄であり、2003年末現在、蓄積した資金は累計1300余億元に達した。
養老保険管理サービスの社会化を推進
これまで中国の企業は自企業の停年退職者への基本的養老金支給と人員管理を担当していた。停年退職者への基本的養老金の期限どおりの全額支給を保障し、企業の社会重務の負担を軽減するため、政府は基本的養老金の社会化支給を積極的に推し進め、2003年末に、企業の停年退職者に支給する基本的養老金は残らず社会化支給を実現し、社会化管理サービスを受ける企業の停年退職者は84.5%に達した。
社会保険の管理レベルを全面的に高め、労働力の移動における社会保険関係の接続の必要に適応するため、中国政府は2003年から「金保プロジェクト」を実施し始め、その目標は社会保障情報が全国コンピューターネットワークに接続して運行することにあり、現在は養老保険情報の中央と省クラスのオンラインが初歩的に実現した。
多段階の養老保険システムを確立
ここ数年来、中国政府は多段階の養老保険システム建設を大いに推し進め、規定によって基本的養老保険に参加する基礎の上で、条件を備えた企業は従業員のために企業年金を設立することができる。企業年金の費用は企業と従業員が共に納付し、基金の完全蓄積を実行し、個人口座の方式で管理する。企業年金基金は市場化管理と運営を実行する。2003年現在、企業の年金計画に参加した人数は700万人近くに達した。このほか、国は個人の貯金のための養老保険の展開を奨励する。
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