新中国の成立後、居住地の公共事務管理に対する都市住民の民主的自治を実現させるため、全国の各都市で普遍的に住民委員会が設立された。1982年、都市住民委員会制度が初めて中国憲法に書き入れられた。1989年、全国人民代表大会常務委員会は「都市住民委員会組織法」を制定し、都市住民委員会の発展に法的基礎と制度上の保障を提供した。1999年、国は全国の26の都市でコミュニティー建設の試行と実験を展開した。その後、全国でコミュニティー建設モデル活動が行われた。2004年末現在、全国の都市に新型コミュニティー建設の要求に合った7万1375の住民委員会が設立された。現在、都市住民の自治を完全なものにするため、都市コミュニティー建設は点から面へ、大都市から中小都市へ、東部地区から西部地区へと推し進められており、秩序だって管理され、優れたサービスを提供し、環境が美しく、文明で吉祥の新型コミュニティーを建設する活動が全国で繰り広げられている。
農村で実行している村民自治と同じように、都市コミュニティー住民の自治の主な内容も、民主的選挙、民主的決定、民主的管理、民主的監督である。民主的選挙の面では、選挙の形式は候補者の指名から自己推薦へ、同額選挙から差額選挙へ、間接選挙から直接選挙へのいくつかの段階を経歴し、地区と身分の制限を打ち破って、民主の度合いがたえず高くなっている。ここ数年来、都市コミュニティー住民の直接選挙が盛んに行われている。国の関係部門が26の試行都市に対する調査が示しているように、コミュニティーの住民はコミュニティー住民委員会の直接選挙に積極的で、投票率は90%を上回った。直接選挙によって成立したコミュニティー住民委員会は若年化、知識化、職業化の趨勢を呈している。民主的決定の面では、コミュニティーの住民は民主的決定の主体であり、コミュニティー住民会議、協商議事会、公聴会など効果的な形式とルートを通じて、コミュニティー内の公共事務について民主的決定を行っている。民主的管理の面では、住民委員会は法によって事を運び、コミュニティー住民自治規約と規約規範に従って活動し、住民の主人公意識を強め、「コミュニティーの事はみんなでやろう」を実現させている。民主的監督の面では、住民委員会の事務を公開し、およそ住民が関心をもつホットな問題、難点のある問題および住民全体の切実な利益にかかわる重要なことは、すべて適時に住民に公開するとともに、住民評議会を開いて住民の意見を聴取し、住民の監督を受けるようにしている。
(三)従業員代表大会制度の建設
従業員代表大会は、企業と事業体に対する従業員の民主的管理の実行を保証する基本的制度である。中国では、従業員は主に従業員代表大会制度を通じて、企業と事業体で主人公としての民主的権利を享有している。
新中国の成立後、公有制企業は従業員代表会議制度を実行し、1957年からこの制度は全国に普遍的に推し広められた。中国の憲法、全人民所有制工業企業法、労動法、労働組合法、全人民所有制工業企業従業員代表大会条例などの法律・法規は、いずれも従業員代表大会制度について相応の規定を行っている。関係法律によると、従業員代表大会は、企業の生産・経営、発展計画と方案に対する審議提案権、賃金、賞金、労働保護、賞罰など重要な規則・制度に対する審査可決権、従業員の生活福祉など重要な事項に対する審議決定権、企業の行政指導幹部に対する評議監督権、工場長に対する推薦・選挙権など五つの職権がある。
中国では、従業員代表大会は広範な大衆的基礎があり、代表は労働者のほか、科学技術要員、管理要員とその他の人もおり、全従業員を代表して民主的に企業を管理することができる。従業員代表大会の閉会後、企業の労働組合委員会が従業員代表大会の活動機構として、従業員代表大会の日常の仕事を処理する。1998年から、国有企業、集団企業とその持株企業が事務を公開し始めるとともに、それを非公有制企業にちくじ推し広めていった。2004年末現在、中国の労働組合を設けている企業と事業体は173万2000社に達し、そのうちの36万9000社に従業員代表大会制度が確立され、従業員数は7836万4000人に達し、事務を公開している企業と事業体は31万6000社で、従業員数は7061万2000人に達した。現在、労働組合を設けている公有制企業のうち、従業員代表大会制度を確立したものは52.8%を占め、従業員数は3502万6000人で、労働組合を設けている公有制企業の従業員数の72.9%を占めている。労働組合を設けている非公有制企業のうち、従業員代表大会制度を確立したものは32.6%を占め、従業員数は2787万人で、労働組合を設けている非公有制企業の従業員数の46.7%を占めている。
改革・開放以来、従業員代表大会およびその他の形式の企業・事業体の民主的管理制度は民主的管理を実行し、労働関係を調整し、従業員の合法的権益を保障、擁護し、企業・事業体の改革、発展、安定を推し進めるなどの面で取って代わることのできない役割を果たした。国は誠心誠意従業員に頼って企業を運営する方針を堅持し、改革・開放の深化に従って、各種所有制の企業・事業体が民主的管理制度を確立し、それを健全して、この方面に存在する際立った問題を確実に解決し、従業員の民主的権利と合法的権益を確保するように努めて推進する。
七、人権の尊重と保障
2004年3月、第10期全国人民代表大会第2回会議は憲法改正案を審議、可決し、「国家は人権を尊重、保障する」を憲法に書き入れ、中国の人権事業発展の新しい一ページを開いた。
人権を尊重、保障し、公民が法に依って広範な権利と自由を享有するのを保証することは社会主義民主を発展させる内在的要求である。社会主義民主とは、国のすべての権力は人民に属し、人民は憲法と法律の定めた公民の権利を確実に享有することである。中国の社会主義民主は公民の諸権利が保障され、たえず発展する基礎の上で実行される民主である。
中国共産党は中国人民の根本的利益の忠実な代表として、終始国家の主権と独立を守り、人民の諸権利を保障し、発展させることを根本的任務とするとともに、生存権、発展権を最も重要な人権としている。中国共産党は発展を最も重要な任務とし、人を本とする全面的、協調的、持続可能な科学的発展観を貫徹することを堅持し、経済発展と社会進歩を促進するように努め、人民の多方面の必要をたえず満たし、人の全面的な発展を実現させるようにしている。
中国憲法は公民の基本的権利と自由を全面的に規定している。憲法を根拠として、中国は一連の人権保障の法律を制定し、わりに整った人権保障の法律制度をつくり上げた。建国後50余年の経済・社会発展の成果を基礎に、中国人民はこれまでなかった全面的、真実で十分な人権を享有している。
――人民の生存権と発展権は保障されている。中国共産党は経済建設を中心とすることを堅持し、人民の生存権と発展権を解決する面で大きな努力を払っている。50余年にわたる奮闘を経て、人民生活は貧困から衣食足りる状態へ、さらに衣食足りる状態からいくらかゆとりのある生活へと二回の歴史的飛躍を基本的に実現させた。中国は世界の10%足らずの耕地で世界人口の22%を占める人口の衣食問題を成功裏に解決した。1979年から2004年にかけて、中国経済は連続して快速な成長をとげ、国内総生産(GDP)は1473億ドルから1兆6500億ドルに増加し、一人当たりは1200ドルを突破した。都市・農村住民の年平均所得は、都市部では4.5倍、農村は4.9倍実質的に増加した。一人当たりの住宅面積は、都市部では6.7平方メートルから25平方メートルに、農村では8.1平方メートルから28平方メートルに増えた。農村の貧困人口は2億5000万から2610万に減少した。中国人の健康レベルは全体として中等所得国の平均水準を上回り、発展途上国の上位にランクされている。平均寿命は新中国成立前の35歳から2004年の72歳前後に延び、妊産婦の死亡率は新中国成立前の10万分の1500から2004年の10万分の48.3に下がり、嬰児の死亡率は新中国成立前の20%から2004年の2.15%に下がった。ここ数年来、中国政府は「国家公共衛生観測情報システム建設企画」、「突発的公衆衛生事件の救助治療システム建設企画」など一連の法規と措置を公布、実施し、公民の健康権・生命権保護を強化した。
――公民の権利と政治的権利は保障されている。中国の憲法と法律は公民の宗教信仰自由、言論出版自由、結社自由などの権利を保護し、公民の財産権、名誉権、姓名権、栄誉権、人格尊厳権、人身住宅不可侵権などを確認、保護している。公民に事情了解権、監督権、公共事務管理参与権などの民主的権利を十分に享有させるため、中国は情報公開などの関係制度をたえず確立し、健全にしている。国は報道出版事業の発展を積極的に奨励しており、2004年に出版、発行した全国紙と省クラスの新聞は257億7000万部、各種の定期刊行物は26億9000万冊、図書は64億4000万冊(枚)に達した。ここ数年来、中国のインターネットは急速な発展をとげ、2005年6月30日現在、ネットのユーザー総数は1億を上回り、そのうち、ブロードバンドのユーザー数は5300万人に達している。国は公民の宗教信仰自由を尊重、保障し、法によって宗教を信仰する公民、宗教団体、宗教活動の場所の合法的権益を侵害されないように保障している。おおまかな統計によれば、現在中国に各種の宗教信者が1億人余り、各種の宗教神職者が約30万人おり、宗教活動の場所が10万カ所余りある。国は「社会団体登録管理条例」、「民間非企業機構登録管理暫定条例」と「基金会管理条例」を制定し、法によって公民の結社自由を保障している。2004年末現在、中国に各種の民間組織が28万9000あり、そのうち、社会団体は15万3000、企業以外の民間機構は13万5000、基金会は約900ある。
――経済、社会、文化の権利は保障されている。中国の憲法と法律・法規は公民の労働権、休息権、男女平等権、男女同一労働同一報酬権、知的所有権、社会保障権、物質的援助獲得権、教育獲得権、結婚・離婚自由権および科学研究、文学芸術とその他の文化活動に従事、参加する権利などに対し、全面的な規定を行っている。ここ数年来、国は各種の措置をとって就業と再就業問題の解決に力を入れ、社会保障制度の確立を急ぎ、教育、科学技術、文化、医療・衛生などの社会事業に対する支持を強化して、公民に経済、社会、文化の権利を実際に享有させるようにしている。2004年末現在、全国の都市部で、養老保険、失業保険、医療保険、労働災害保険の加入者数はそれぞれ1億6400万人、1億600万人、1億2400万人、6845万人に達し、それぞれ前年末より847万人、211万人、1502万人、2270万人増えた。農村の社会養老保険加入者数は5378万人に達し、わりに速い発展の態勢を呈している。全国では2205万人の都市部住民が政府の最低生活保障を受けている。中国は9年制義務教育の普及、青壮年の非識字者一掃を基本的に達成した。2004年、中央政府が農村の義務教育に用いた各種の特別資金は前年より70%増の100余億元に達し、全国の各種大学の在学生数は2000万人を上回り、大学の純入学率は19%に達した。2004年末現在、全国に放送局が282局あり、人口カバー率は94.1%に達し、テレビ局が314局あり、人口カバー率は95.3%に達した。国は農村就労者の合法的権益保護をたえず強化するとともに、建築分野の工事費滞納や都市へ行って就労する農民の賃金滞配問題を全面的に整理、解決するため、2004年に「建設分野の農村就労者の賃金給付管理暫定規則」を制定した。
――婦人、老人、未成年者など特殊な人たちおよび身障者など弱体の人たちの合法的権利は保障されている。中国は婦人権益保障法、老人権益保障法、未成年者保護法、身体障害者保障法を制定し、婦人、老人、未成年者など特殊な人たちおよび身障者など弱体の人たちの保護について特別な規定を行っている。中国では、婦人の国家事務に参与する権利は保障されている。1975年の第四期から2003年の第10期までの全国人民代表大会の代表に占める女性の比率はいずれも20%を上回っている。現在、婦人の就業人数、労働報酬、教育レベルは男性とほぼ同じである。中国はすでに高齢化社会に入っており、老人は政府と社会各方面の特殊な配慮を受けている。2004年、全国の企業が定年退職者に基本的養老年金を3031億元支給し、中央財政は522億元を補助した。中国は総人口の四分の一を上回る3億7600万の18歳以下の未成年者を抱えている。健康、教育、法的保護、環境などの方面から児童の発展を促進するため、中国政府は1992年と2001年に前後して「九〇年代中国児童発展計画綱要」と「中国児童発展綱要(2001-2010年)」を制定した。中国に身体障害者が6000万人おり、その人数は中等国の人数に相当する。2004年、身障者の就業率は80%に達し、330余万の身障者は程度の差こそあれリハビリを得ている。
――少数民族の権利は保障されている。中国では、各少数民族は漢族と同じように憲法と法律の定めたすべての公民の権利を平等に享有し、国家の大事と各クラスの地方事務の管理に平等に参与している。少数民族の権利は法律と関係政策の特殊な保障を受けている。憲法と選挙法によると、最高国家権力機関の全国人民代表大会には適当な人数の少数民族代表がおり、人口の特に少ない民族は少なくとも1人の代表がいる。第一期全国人民代表大会から、少数民族代表の比率はずっと14%前後を保ち、少数民族の人口が全国人口に占める8%前後の比率よりはるかに高いものである。地方の各クラス人民代表大会では、当地の集まってまたは分散して住む少数民族は、いずれも代表を選出してその地の人民代表大会に参加しており、しかもその少数民族代表の代表する人口数は当地の人民代表の代表する人口数より少なくてもよいことになっている。各少数民族の人は国家機関と政府部門で各種の職務を担任することができる。各民族は自民族の言語と文字を使用し、発展させる自由がある。国は少数民族の風俗習慣と宗教信仰自由を尊重、保護している。
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