憲法と民族区域自治法の規定によれば、民族自治地方の自治機関は自治区、自治州、自治県の人民代表大会と人民政府であり、これらの自治機関は同じクラスの地方国家機関の職権を行使すると同時に、次のような自治権を擁している。一は自民族と所在地区の内部事務を自主的に管理する。中国の155の民族自治地方の人民代表大会常務委員会は、いずれも区域自治を実行する民族の公民が主任あるいは副主任を担任し、自治区主席、自治州州長、自治県県長はすべて区域自治を実行する民族の公民が担任する。民族自治地方の自治機関所属部門のその他の構成メンバーには、区域自治を実行する民族の幹部とその他の少数民族の幹部が法によって合理的に配属されている。現在、全国の少数民族の幹部総数は290余万人に達している。二は自治条例と単行条例を制定する権力を享有する。2004年末現在、民族自治地方は現在実施している有効な自治条例と単行条例をそれぞれ133件と418件制定している。民族自治地方が地元の実際に基づいて、婚姻法、相続法、選挙法、土地法、草原法などの法律に対し変通と補足の規定を行ったものが68件ある。三は自民族の言語と文字を使用し、発展させる。現在、中国では22の少数民族が28種の自民族文字を使用している。2003年、少数民族の文字で出版された図書は4787種、印刷部数は5034万冊、雑誌は205種、印刷部数は781万冊、新聞は88種、印刷部数は1億3130万部に達した。現在、蒙古、チベット、ウイグル、朝鮮、イなどの少数民族文字はコード文字セット、フォントとキーボードの国家基準があり、文字のソフトはすでにWindowsシステムでの運行とレーザー製版を実現した。四は少数民族の宗教信仰自由を尊重、保障する。2004年末現在、チベット自治区にチベット仏教の活動施設が1700余カ所あり、寺院に僧侶と尼僧が約4万6000人おり、新疆ウイグル自治区にモスクが2万3900カ所あり、神職者が約2万7000人いる。そのほか、民族自治地方は自民族の風俗習慣を維持するか改革し、所在する地方の経済建設事業を自主的に配置、管理し、発展させ、地方財政を自主的に管理し、教育、科学技術、文化、医療・衛生、スポーツなどの社会事業を自主的に発展させる権利がある。
国はさまざまな措置をとって民族自治地方の経済・社会事業の発展を支持、援助している。その主なものは、民族自治地方の発展加速をより際立った戦略的位置に置くこと、民族自治地方のインフラ建設プロジェクトを優先的かつ合理的に配置すること、民族自治地方に対する財政面の投入と金融面の支持を強化すること、民族自治地方の生態整備と環境保全を重視すること、特殊な措置をとって民族自治地方の教育と科学技術事業の発展を援助すること、少数民族の貧困地区に対する扶助を強化すること、民族自治地方の社会事業に対する投入を増加すること、民族自治地方の対外開放拡大を助成すること、発達地区と民族自治地方の対応支援を展開すること、少数民族の生産と生活面の特殊な必要を配慮することなどがある。中国政府は2000年から西部大開発戦略を実施し始め、2004年末現在、60件の重点プロジェクトが陸続と着工し、投資総額は8500億元余りに達し、その範囲は交通、エネルギー、教育、医療・衛生、環境保全など多くの方面にわたっている。全国の五つの自治区、27の自治州および120の自治県の中の83の自治県が西部大開発の範囲に組み入れられ、国の制定した「八・七貧困扶助難関突破計画」、「中国農村貧困扶助開発綱要」と実施した東部沿海の発達地区と西部地区の対応支援、「貧困地区義務教育プロジェクト」、「少数民族貧困地区衣食扶助基金」、「天然林保護プロジェクト」、「どの村もラジオを聴取し、テレビを視聴できるプロジェクト」などは、いずれも民族地区の発展加速援助を重要な内容としている。国はチベットの発展に対し特殊な按配を行っている。1994年から2001年にかけて、中央政府はチベットに39億元を直接投資して、30件のプロジェクトを建設した。第10次5カ年計画(2001-2005年)期に、中央政府はチベットに312億元を投資して、117件のプロジェクトを建設した。
国と発達地区の大きな援助と支持の下で、民族自治地方は自らの強みを十分に生かして、経済が発展し、政治が安定し、社会が進歩し、民族が和睦する好ましい局面を保っている。1994年から2003年までの民族自治地方のGDPの年平均成長率は全国平均水準より約1%高い9.87%に達した。1994年の民族自治地方の一人当たりGDPは全国の一人当たりGDPの63.5%であったが、2003年は66.3%に上昇した。2003年、民族自治地方の完成した地方財政収入は1994年比2.3倍増の674億元に達した。同年のチベットの一人当たりGDPは6871元で、全国の一人当たりGDPの75.5%に相当し、新疆の一人当たりGDPは9700元で、全国の一人当たりGDPの106.6%に相当するものであった。
民族区域自治制度を成功裏に実行することによって、中国の少数民族は法によって自民族の事務を自主的に管理し、国家と社会事務の管理に民主的に参与し、中国の各民族が大小を問わず平等な経済、政治、社会、文化の権利を享有するのを保証し、国家の統一と民族の団結を共同で守り、国家を分裂させ、民族団結を破壊する行為に反対して、各民族が互いに支持し、助け合い、共に団結して奮闘し、共に繁栄、発展する調和のとれた民族関係を形成している。
六、都市と農村の末端部の民主
末端部の民主を拡大することは、中国の特色をもつ社会主義民主政治を健全にし、発展させる必然の趨勢と基礎的活動である。中国の発展と進歩に伴い、全国各地の都市と農村の末端部の民主がたえず拡大され、公民の秩序だった政治活動に参与するルートが増え、民主の実現形式は日ましに豊富になっている。
現在、中国では農村の村民委員会、都市の住民委員会および企業の従業員代表大会を主な内容とする末端部の民主自治システムが確立されている。人民大衆が都市と農村の末端部の大衆的自治組織の中で、法によって民主的選挙、民主的決定、民主的管理、民主的監督の権利を直接行使し、所在する末端部の公共事務と公益事業に対し民主的自治を実行することは、現在中国で最も直接で最も広範な民主の実践となっている。
(一)農村末端部の民主政治建設
中国の13億人口のうち、8億余りが農村にいる。どのように農村末端部の民主を拡大し、発展させ、農民に所在する村で真に主人公になり、自らの民主的権利を十分に行使させるかは、中国の民主政治建設の重要な問題である。長年の模索と実践を経て、中国共産党は数億の農民を指導して中国の国情に合った、農村末端部の民主政治建設を推し進める方法を探し当てた。これはつまり村民自治を実行することである。
村民自治は、広範な農民が民主の権利を直接行使し、法によって自らの事を処理し、自己管理、自己教育、自己奉仕を実行する基本的制度である。それは1980年代初期から始まり、1980年代に発展し、1990年代に普遍的に実行され、現在中国の農村で末端部の民主を拡大し、農村の管理レベルを高める効果的方式となっている。
中国の憲法は、村民委員会が農村末端部の大衆的自治組織としての法的地位を規定している。中国の村民委員会組織法は、村民委員会の性質、機能、選出手順、任期などの関係問題について明確な規定を行って、農村末端部の民主自治を健全に発展する軌道に乗せた。現在、全国の31の省、自治区、直轄市は、村民委員会組織法の実施規則または村民委員会の選挙規則を制定するかまたは修正して、村民自治により具体的な法的保障を提供している。
民主的選挙、民主的決定、民主的管理、民主的監督は村民自治の主な内容である。
――民主的選挙。憲法、村民委員会組織法などの法律・法規によって、村民は村民委員会のメンバーを直接選出するかまたは罷免する。村民委員会は主任、副主任、委員3人ないし7人からなり、一期の任期は3年である。選挙する過程で、村民委員会メンバーの候補者は村民が直接指名し、投票に参加して選出し、その場で選挙の結果を公表し、活動を公正、公開、公平に行うようにしている。村民の選挙参加の熱情が盛り上がり、大まかな統計によると、全国の農村住民の平均選挙参加率は80%を上回り、90%以上に達したところもある。2004年末現在、中国の農村に64万4000の村民委員会がつくられた。全国のほとんどの省、自治区、直轄市では、村民委員会は普遍的に5回か6回の任期満了に伴う改選が行われた。
――民主的決定。およそ村民の利益にかかわる重要な事項は、すべて村民会議または村民代表会議で討論され、多数の人の意見に基づいて決定が行われる。中国の農村の情況が千差万別で、村の規模がさまざまであり、人数がわりに多く、居住が分散している村落では、村民会議を開催し、議決するのが難しいという実際の困難に直面している。そういうところでは、村民代表会議を発足させることによってこの問題がわりによく解決された。現在、中国の85%の農村では、民主的政策決定を行う村民会議または村民代表会議の制度が確立されている。
――民主的管理。国の法律・法規と関係政策に基づき、地元の実情と結び付けて、村民全体が村民自治規約または関係規約の制定または改正を討論する。村民委員会と村民は「小型憲法」と形象的に称される自治規約に基づいて、自己管理、自己教育、自己奉仕を実行する。現在、中国の80%以上の村では、村民自治規約と関係規約が制定され、民主的財務管理、財務監査、村務管理などの制度が確立されている。
――民主的監督。村民は、村務公開、村の幹部に対する民主的評議、村民委員会の活動報告の定期的提出、村の幹部の離任時の会計検査などの制度と形式を通じて、村民委員会の活動情況と村の幹部の行為を監督する。特に村務公開は村民から普遍的に歓迎されている。
村民自治の成功を収めた実践は、中国共産党が数億の農民を指導して中国の特色をもつ社会主義民主政治を発展させる偉大な試みである。農村末端部の民主を拡大し、村民自治を実行することは、広範な農民の主人公になる積極性、創造性、責任感を大いに引き出し、中国農村の民主政治建設の新しい一ページを開いた。
(二)都市コミュニティーの民主政治建設
都市の住民委員会は中国の都市住民が自己管理、自己教育、自己奉仕を行う末端部の大衆的自治組織であり、都市の末端部で直接民主を実現させる重要な形式である。
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