民族自治地方の自治機関は生活環境と生態環境を保護、改善し、汚染とその他の公害を防除している。法律の規定に基づいて、自地方にある草地と森林の所有権と使用権を確定する。法に依って自地方の天然資源を管理、保護し、法律の規定と国の統一的計画に基づいて、自地方が開発できる天然資源を優先的かつ合理的に開発、利用する。例えば、四川省アバ・チベット族・チャン族自治州は世界自然遺産である九寨溝、黄竜の強みを十分に生かして観光資源を観光産業に転換し、保護の中で開発し、開発の中で保護している。
民族自治地方の自治機関は地方の財政を管理する自治権がある。およそ国の財政体制に基づいて民族自治地方に属する財政収入は、いずれも民族自治地方の自治機関によって自主的に按配、使用される。民族自治地方の財政予算の支出は、国の規定に基づいて、予備資金を設立し、予算に占める予備金の比率は一般の地区より高い。民族自治地方の自治機関は財政予算を実行する中で、収入の超過分と支出の節約分の資金の使用を自ら按配する。それと同時に、民族自治地方の自治機関は国の税法を実行する時、国が統一的に審査、認可すべき税金減免プロジェクトを除き、地方の財政収入に属し、納税面から配慮、奨励する必要のある若干のものに対し、減税あるいは免税を実行することができる。
(七)教育、科学技術、文化などの社会事業を自主的に発展させる
民族自治地方の自治機関は国の教育方針に基づき、法律の規定によって、自地方の教育計画、各級各種学校の創設、学制、学校運営形式、教育内容、教育用語、生徒募集方法を決定する。少数民族の放牧地区と経済が困難で居住が分散している少数民族の山岳地帯では、寄宿と奨学金を主とする公立民族小学校と民族中学を創設し、勉学する生徒が義務教育段階の学業を終えるのを保障する。主に少数民族の生徒を募集する学校(クラス)とその他の教育機構は、条件があれば少数民族文字の教科書を採用するとともに、少数民族の言語を使用して授業すべきであり、また異なる状況に基づいて、小学校の低学年あるいは高学年から漢語課程を開設し、全国に通用する標準語と規範化した漢字を推し広める。
民族自治地方の自治機関は民族の形式と民族の特徴を持つ文学、芸術、報道、出版、放送、映画、テレビなどの民族文化事業を自主的に発展させ、関係機構と部門が民族の歴史と文化方面の書籍を収集、整理、翻訳、出版し、民族地区の名所古跡、貴重な文化財とその他の重要な歴史文化遺産を保護し、優秀な民族の伝統的文化を受け継ぎ、発展させるのを組織、支持している。 2004 年 8 月末現在、中国に世界文化遺産、自然遺産、文化と自然遺産が 29 カ所あり、そのうち民族自治地方にある文化遺産はラサのポタラ宮、麗江古城の2カ所あり、自然遺産は九寨溝、黄竜風景名勝区、「三江並流」自然景観など 3 カ所ある。そのほか、ナーシー族のドンバ古典文献が「世界記憶遺産リスト」に組み入れられている。
民族自治地方の自治機関は自地方の科学技術発展計画を自主的に決定し、科学技術知識を普及させ、また自地方の医療衛生事業の発展計画を自主的に決定し、近代的な医薬と民族の伝統的医薬を発展させている。 2003 年末現在、全国に民族病院が 157 カ所あり、そのうちチベット族の病院が 55 カ所、蒙古族の病院が 41 カ所、ウイグル族の病院が 35 カ所、タイ族の病院が 1 ヵ所、その他の民族の病院が 25 カ所あり、ベッドは 5829 床ある。
民族自治地方の自治機関はスポーツ事業を自主的に発展させ、民族の伝統的スポーツ活動を展開している。 2003 年末までに、中国は全国的な少数民族伝統的スポーツ大会を 7 回催した。 2003 年、寧夏回族自治区で催された第 7 回全国少数民族伝統的スポーツ大会では、 14 種目の競技と 125 種目のエキジビションが行われた。
四、民族自治地方に対する国の支持と援助
「憲法」は「国はあらゆる努力を尽くして、全国各民族の共同の繁栄を促進する」と規定している。「民族区域自治法」は一歩進んで上級国家機関が民族自治地方の発展加速を支持、援助することを法的義務と明確に規定している。中国政府は一連の措置をとって、「憲法」と「民族区域自治法」の規定を貫徹、実行している。
(一)民族自治地方の発展加速を際立った位置におく
国は国民経済と社会発展計画を制定する時、民族自治地方の特徴と必要を十分に尊重、配慮し、全国の発展の全体的配置と総体的要求に基づいて、民族自治地方の発展加速を際立った戦略的位置においている。西部地区と民族自治地方の発展を加速するため、中国政府は 2000 年から西部大開発戦略を実施しはじめ、全国の 5 つの自治区、 27 の自治州および 120 の自治県(旗)の中の 83 の自治県(旗)は西部大開発の範囲に組み入れられ、ほかに三つの自治州が国の西部大開発優遇政策を参照、享受している。西部大開発戦略実施 5 年来、西部地域は陸続と 60 件の重点プロジェクトを新規建設し、投資総額は約 8500 億元に達する。これは民族自治地方の経済・社会発展を促す上で重要な役割を発揮した。
(二)民族自治地方のインフラ建設プロジェクトを優先的かつ合理的に配置する
国は民族自治地方にインフラ建設と資源開発を配置する時、投資の比率と政策的銀行ローンの比率を適宜に高めている。民族自治地方の関係資金を必要とする場合は、異なる状況に基づいて関係資金の減免を配慮する。中国政府は第 1 次 5 カ年計画( 1953 年~ 1957 年)から、民族自治地方で一部の重点建設プロジェクト、例えば内蒙古の包頭鋼鉄基地、寧夏の青銅峡水力発電所、新疆の石油探査など、および四川=チベット、青海=チベット、新疆=チベットなどの幹線自動車道路と包頭=蘭州、蘭州=西寧、蘭州=ウルムチの主要鉄道幹線を配置した。 1990 年代には、寧夏の中衛から陝西の宝鶏までの鉄道、新疆の南疆鉄道、ターチョン空港など多くの大型交通施設を建設した。 2000 年以来、国は投資して「西部の天然ガスを東部に送る」、「西部の電力を東部に送る」、青海・チベット鉄道など多くの重要なプロジェクトを建設することを通じて、民族自治地方がいちだんと資源の強みを経済の強みに転化するように援助している。
国はチベットのインフラ建設と基礎産業の発展に対し特殊な按配を行っている。 1984 年から 1994 年にかけて、国はチベットの 43 件のプロジェクトに投資し、全国の 9 省・直轄市がその建設を援助し、投資総額は 4 億 8000 万元に達した。 1994 年から 2001 年にかけて、中央政府は 39 億元を直接投資して、 30 件のプロジェクトを建設し、東部の発達地区は対応支援として 9 億 6000 万元を投資して、 32 件のプロジェクトの建設を援助した。第 10 次 5 カ年計画( 2001 年~ 2005 年)期に、中央政府はチベットに 312 億元を投資して、 117 件のプロジェクトを建設している。
1999 年から、中国政府は相継いですべての民族自治地方に恩恵が及ぶ「貧困県の県外に延びる道路建設」、「西部の各県を結ぶアスファルト道路工事」、「県と県の間および農村の道路建設」などの交通インフラ建設を大規模に実施し、総額 1000 億元近くを投資して、 22 万 5000 キロの農村と県クラスの道路を新規建設、改造して、一部の少数民族地区の立ち遅れた交通条件を著しく改善した。
(三)民族自治地方への財政支持を強化する
国民経済の発展と財政収入の増加に従って、各クラスの政府は民族自治地方への財政転移支払いを強化している。国は一般的な財政転移支払い、特別財政転移支払い、民族優遇政策の財政転移支払いおよび国の確定したその他の方式で、民族自治地方への資金投入を増やし、民族自治地方の経済発展と社会進歩を促し、発達地区との格差をちくじ縮小している。 1955 年から、中国政府は「民族地区補助費」を設立し、 1964 年に「民族地区予備資金」などの特別資金を設立するとともに、少数民族地区の財政予備費の設立比率を高めるなどの優遇政策をとって、民族自治地方が経済を発展させ、人民の生活レベルを高めるのを援助している。 1980 年から 1988 年にかけて、中央の財政は内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの 5 自治区および雲南、貴州、青海など少数民族が比較的に集中している 3 省に対し、財政 10 %逓増の定額補助制度を実施した。 1994 年、国は分税制を主とする財政管理体制改革を実施したが、もとの少数民族地区への補助と特別資金給付政策はすべて保留されている。国は 1995 年から実行した過渡期の転移支払い規則の中に、内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの 5 自治区と雲南、貴州、青海など少数民族が比較的に集中している 3 省およびその他の省の少数民族自治州に対し、少数民族地区を対象とする政策的転移支払いの内容を特に増設して、政策的傾斜を実行している。
(四)民族自治地方の生態建設と環境保全を重視する
中国政府の確定した「全国生態環境建設計画」の四つの重点地区と四つの重点プロジェクトはすべて少数民族地区にある。国の「天然林保護プロジェクト」、耕地を森林に戻し、牧場を草地に戻すプロジェクトは主に少数民族地区で実施されている。四川のルォルガイ湿地自然保護区、雲南のシーサンパンナ自然保護区など全国に 226 カ所ある国家クラス自然保護区のうち、半数近くが少数民族地区にある。このほか、国はまた新疆で「タリム盆地総合整備プロジェクト」、青海の玉樹チベット族自治州で「三江源保護プロジェクト」を実施するとともに、南部のカルスト地区の生態整備を非常に重視している。
(五)特殊な措置をとって民族自治地方の教育事業発展を援助する
国は民族自治地方が 9 年制義務教育を普及させ、各種の教育事業を発展させるのを援助している。民族自治地方は国が 9 年制義務教育を基本的に普及させ、青壮年の非識字者を一掃する難関突破計画を実施する重点的地区である。国が実施している「貧困地区義務教育プロジェクト」も、主に西部の少数民族地区を対象としている。同時に、国は民族大学および民族クラス、民族予科を創設して少数民族の学生を募集している。大学と中等専門学校が新入生を募集する時、少数民族の受験生に対し採用の要求と条件を適度に緩め、人口の特に少ない少数民族の受験生に特殊な配慮を与えている。現在、中国に民族大学が 13 校あり、主に少数民族の人材を育成している。同時に発達地区で民族中学校を開設するか普通中学に民族クラスを設けて、少数民族の生徒を募集している。中国政府は少数民族の高級中堅人材の育成を強化するため、 2005 年から少数民族地区で修士コースと博士コースの大学院生 2500 人を試験的に募集することを決定し、 2007 年までに年間募集人数が 5000 人、在校生総数が 1 万 5000 人の規模に達するように努める。
(六)少数民族の貧困地区に対する扶助を強化する
中国政府が 1980 年代中期から組織的、計画的な貧困扶助活動を大規模に展開して以来、少数民族と民族地区は終始国の重点的な扶助対象である。 1986 年に初めて確定された 331 の国家重点扶助貧困県のうち、民族自治地方の県は総数の 42.6 %を占める 141 県ある。国は 1994 年から「八・七貧困扶助難関突破計画」を実施し始め、その確定した 592 の国家重点扶助貧困県のうち、民族自治地方の県は総数の 43.4 %を占める 257 県ある。 2001 年から実施し始めた「中国農村貧困扶助開発綱要」は、またも民族地区を重点的な扶助対象に確定し、新たに確定された 592 の国家貧困扶助開発重点県の中で、民族自治地方(チベットを含まない)の県は総数の 45.1 %を占める 267 県に増えた。同時に、チベット全域は国の貧困扶助開発の重点的扶助範囲に組み入れられた。
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