中国の税関は国境での知的所有権保護を実施する過程で、知的所有権所有者および知的所有権所有者協会との連絡と呼応を強化し、知的所有権主管部門との疎通と協力を強化し、その他の国の国境法律執行部門との協力と交流を強化している。現在、中国の税関はすでにアメリカ映画協会など知的所有権所有者組織と知的所有権保護協力覚書を締結し、すこぶる成果のある協力を繰り広げている。また、知的所有権管理部門、公安部門など知的所有権の行政・刑事法律執行部門と何回も法律執行協力を行って、知的所有権を侵害する違法犯罪行為を効果的に取り締まっている。さらにはEU、アメリカなど諸国の税関と税関の知的所有権保護の内容を含む行政法律執行取決を結び、その他の国の税関と知的所有権保護の情報交換と法律執行協力を積極的に繰り広げている。
八、公安機関の知的所有権侵害取締り
ここ数年来、中国の公安機関は一連の措置をとって、各種の知的所有権侵害犯罪行為を厳しく取り締まり、法律執行のレベルと能力をたえず高めて、社会主義市場経済の健全な発展を保障してきた。
1998年、知的所有権侵害犯罪行為の取締りをいちだんと強化するため、「刑事訴訟法」の規定に基づいて、公安部に知的所有権侵害犯罪行為の取締りを組織、指導し、協調させ、重大事件の処理を監督する専門機構が設立された。地方の各クラス公安機関にも、この種の犯罪事件の受理、立件、捜査を具体的に担当する専門の捜査陣が設けられている。2000年から2004年までに全国の公安機関は知的所有権侵害犯罪事件を5305件摘発し、総額は22億元近くに達し、犯罪容疑者を7100人逮捕した。そのうち、摘発した商標専用権侵害事件は4269件、総金額は11億8000余万元に達し、犯罪容疑者を5564人逮捕した。多くの知的所有権侵害犯罪事件は、偽造劣悪製品生産販売罪を犯したとして処罰された。
2004年11月以来、公安部は全国で1年間にわたって商標専用権侵害犯罪取締り特別行動を繰り広げ、波及面が広く、劣悪な影響を及ぼし、金額がわりに大きな知的所有権侵害犯罪事件を多く摘発した。これらの事件は主に、浙江省公安機関の摘発した「ギレッテ」かみそり刃の偽造事件、福建省公安機関の摘発した「アディダス」、「ナイク」などのスポーツシューズの偽造事件、広東省公安機関の摘発した米シコー社製電子製品の偽造事件、四川省公安機関の摘発した「五糧液」など銘酒の偽造事件などがある。
中国に投資し、製品を販売し、企業と研究開発センターを設立する外国企業が増えるに伴い、中国の公安機関は知的所有権所有者の意見と提案を真剣に聴取するため、定期疎通協調制度を徐々に確立している。2002年12月以来、公安部は関係ある外商投資企業協会とともに、それぞれ海南省、広東省、広西チワン族自治区で「知的所有権刑事保護フォーラム」を3回開き、フォーラム宣言を発表し、疎通と協調を強化する面で好ましい役割を果たした。
国際的な知的所有権侵害犯罪事件がますます増える状況に照らして、中国の公安機関は知的所有権侵害犯罪取締り分野の国際法律執行協力を非常に重視し、調査と証拠集めを援助し、犯罪の手がかりを通報し、情報を交換し、司法援助を提供するなどの面で各国の法律執行機構と積極的に協力を繰り広げている。2004年7月、中国の公安機関は全力あげて米国土安全保障省移民・税関法律執行局と協力し、上海で海賊版DVD販売の容疑がある重大事件を成功裏に摘発し、処理し、アメリカ籍の犯罪容疑者をかしらとする7人の犯罪容疑者を逮捕し、海賊版DVDの隠匿個所を3カ所つぶし、海賊版DVDを21万余枚没収した。
九、知的所有権の司法保護
ここ数年来、中国の検察機関は知的所有権侵害の刑事事件を取り調べ、容疑者を逮捕、起訴し、法によって関係ある刑事訴訟活動に対し法的監督を行う職責を真剣に履行し、知的所有権侵害犯罪容疑のある多くの刑事事件を処理した。2000年から2004年にかけて、各クラスの検察機関は知的所有権侵害犯罪容疑者2533人を逮捕し、2566人を起訴するのを許可した。そのうち、2004年に逮捕を許可した知的所有権侵害事件犯罪容疑者は602人、起訴した者は638人である。2004年、全国の検察機関は、製品偽造と知的所有権侵害犯罪を取り締まる特別立件監督行動を繰り広げ、関係ある行政法律執行機関が法によって公安機関に犯罪容疑事件を移送するのを督促し、公安機関が法によって立件すべきであるがいまだに立件していない事件を法によって立件するのを監督し、犯罪容疑事件をすかさず司法プロセスに入らせるのを確保し、同時に偽造品製造・販売と知的所有権侵害の違法犯罪行為を放任、庇護する国家公務員の職務犯罪事件を多く調査、処理した。
長年来、中国の各クラス人民法院は、「公正と効率」というテーマをめぐって、知的所有権の民事・刑事裁判をたえず強化してきた。各種の知的所有権訴訟事件の審理を通じて、内外の知的所有権所有者の合法的権益を平等に保護し、法によって知的所有権侵害行為に制裁を加え、知的所有権を侵害する犯罪行為を厳しく取り締まり、社会の公平と正義を実現させるためにたゆまずに努力を払っている。
1981年から技術契約紛争事件を受理して以来、中国の法院は知的所有権裁判分野をたえず広げ、著作権、商標、特許、不当競争、コンピューター・ソフト、植物新品種、集積回路配置図設計など各種の知的所有権事件の裁判を相次いで行い、知的所有権の裁判地位を確立した。1998年から2004年までに全国の法院が結審した知的所有権民事一審事件は3万8228件、刑法分則第3章第7節に記された知的所有権侵害犯罪の一審事件は2057件、判決を言い渡した犯罪者は2375人であった。そのうち、2004年に全国の法院が結審した知的所有権民事一審事件は8332件、刑法分則第3章第7節に記された知的所有権侵害犯罪の一審事件は385件、判決を言い渡した犯罪者は528人であった。このほか、2004年に全国の法院はさらに偽造劣悪商品生産販売犯罪事件932件を結審し、犯罪者1453人に判決を言い渡し、不法経営犯罪事件1434件を結審し、犯罪者2103人に判決を言い渡した。上述二種類の犯罪事件のうち、知的所有権侵害犯罪に属する事件がかなり多くある。
法律を的確に適用し、法律執行の尺度を統一するため、最高人民法院は知的所有権事件の裁判経験をしめくくった上、法によって一連の関係ある司法説明を制定し、一連の重要な知的所有権の法律適用原則を完全なものにして、知的所有権の裁判に現れた新しい問題をすかさず解決し、各クラス人民法院が知的所有権事件を正確に審理するよう指導することに対し重要な役割を果たしている。例えば、2001年6月に最高人民法院が公布した「起訴前に特許権侵害を停止した行為の法律適用問題に関する若干の規定」は権利侵害行為をすかさず制止し、所有権所有者の損害拡大を効果的に防止するために訴訟措置を提供している。最高人民法院が1998年12月に公布した「不法出版物刑事事件を審理するにあたって具体的に応用する法律の若干の問題に関する説明」は、著作権侵害犯罪の罪状決定と量刑基準を明確にしている。最高人民法院と最高人民検察院が2004年12月に共同で公布した「知的所有権侵害刑事事件を処理するにあたって具体的に応用する法律の若干の問題に関する説明」は、刑法の規定を厳格に遵守し、中国の国情と司法の実状を総合的に考慮して、知的所有権侵害犯罪の罪状決定基準を適当に引き下げ、刑法の関係条文の操作可能性を適当に高め、知的所有権侵害刑事事件の処理に適用する具体的な法律根拠を提供しているが、これは知的所有権侵害の犯罪行為を効果的に取り締まることにとって重要な意義がある。
中国の法院は知的所有権担当裁判官の職業化建設を非常に重視している。長年の裁判の実践と計画的訓練を経て、法律に精通し、外国語が堪能で、豊富な裁判経験と科学技術の専門知識を身につけた素質の高い知的所有権裁判官を多数養成し、わりに健全な知的所有権裁判組織を徐々につくり上げ、知的所有権裁判の効果的展開を人員、組織の面から力強く保障している。
中国の法院はたえず知的所有権司法分野の国際交流と協力を強化し、国外の知的所有権裁判の有益な経験と成功した方法を学び、それを参考にしている。最高人民法院は世界知的所有権機関、欧州連合(EU)などとの友好協力を積極的に繰り広げ、知的所有権シンポジウムと養成クラスを何回も催して、好ましい効果をあげ、中国の知的所有権の司法保護のレベルアップを力強く促し、知的所有権裁判を新たなレベルに達するようにたえず推し進めている。
結語
事実が示しているように、中国政府が知的所有権保護のために並大抵でない努力を払った結果、中国の知的所有権保護はわずか二十数年で衆目の認める著しい進展をとげ、先進国が普通数十年ないし百年以上かかった道程をたどった。しかし、中国政府は、13億人口を抱える発展途上の大国として、経済が相対的に立ち遅れ、科学技術レベルがそれほど高くない状況の下で、完全な知的所有権保護制度の確立が一朝一夕にできるものでないということをよく知っている。中国では、知的所有権保護はなおも長い道程を歩まなければならず、任務はきわめて重いものである。
現在、中国の一部の地区と分野に、知的所有権を侵害する行為が依然として存在し、その中にかなり深刻なところもある。全社会の知的所有権保護意識はいちだんの向上が待たれている。同時に、経済のグローバル化および世界の科学技術の日進月歩の発展によって、知的所有権保護は新しい挑戦に直面している。このため、中国政府は、科学的発展観の要求に基づき、いくらかゆとりのある社会を全面的に建設し、調和の取れた社会を構築する過程で、いっそう効果的な政策と措置をとって、中国の知的所有権保護を新たなレベルに推し上げるよう努力するであろう。
長年来、中国は知的所有権制度を確立する過程で、国際社会の積極的支持と協力を得てきた。今後、中国政府はひきつづき自ら引き受けた知的所有権保護の国際義務を真剣に履行し、いっそう積極的な開放の姿勢で、世界各国および国際組織との協力を強化し、世界的範囲内で知的所有権保護の好ましい制度と環境をつくり上げるようともに努力するであろう。
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