自然光は制御しにくいため、内部光源はすべて人工光を使った。人間の栄養の必要性に基づき、小麦・大豆・ラッカセイなど5種類の穀物とニンジン・キュウリ・空心菜など15種類の野菜、さらにイチゴが選ばれ、キャビン内で栽培された。
小麦は主要穀物となるだけでなく、酸素の主要供給源ともなる。105日間ではすべての酸素がほぼ3回循環再生される計算となる。
実験に参加した科学者が105日間で摂取した食物のうち、ステーション内の生態系で生産されたものは55%を占めた。外から持ち込まれた残りの45%は主に肉類だ。
「月宮1号」では食用の虫も飼育された。豊富な動物性蛋白質源となるミールワームを同類の実験で利用しているのは中国だけだ。
2011年に米国で開催された国際シンポジウム「宇宙における人間」では、中国の科学者が唐辛子と山椒で炒めたミールワームを持って行き、関連する食用研究について米国人研究者らに紹介した。
見学者らは「虫を食べるのか」と最初は笑って見ていたが、勇気ある若い男性が一口食べ、「フレンチフライのようでおいしい」と言うと、多くの人が続いて味見し、持っていった一箱をたちまち平らげてしまったという。
▽地球のコピーにあらず
今回の「月宮1号」は、米国で作られた「バイオスフィア2」とは異なる。
「地球の生態系のシミュレーションを目的とした『バイオスフィア2』は失敗した。その繰り返しはしない」と劉さんは語る。「私たちの試みは地球をコピーするものではない。地球の生態系は数十億年にわたって自然に形成されたもので、すべての生物は平等だ。人間は自分を高等だと考えるかもしれないが、地球の生態系からすればヒトもイヌも同じだ」
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