中国科学技術大学が発表した情報によると、同校の工学科学学院近代力学部の姜洪源教授は、米ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームと協力し、理論に基づく模型作成と実験・検証により、がん細胞の限りある空間内での転移に関する新たなメカニズムを発表。細胞力学の研究で画期的な進展を実現した。研究成果はこのほど、生物学の世界的に権威ある学術誌「セル」に掲載された。科技日報が伝えた。
がん細胞の転移の研究は、主に二次元の表面の細胞運動に集中しており、細胞の転移は主に細胞の粘着によるものと判断されている。つまり細胞の前端部と表面に新たな粘着が生じ、細胞の後端と表面が離れることで、細胞の運動が実現されるというのだ。しかし二次元の表面は、がん細胞の体内のミクロ環境とは大きく異なっている。当初の腫瘍から離れたがん細胞は体内で、主に血管やリンパ管などの細い管状構造にそって転移し、その他の部位に転移し生存を続け、新たな腫瘍を形成する。だが細胞の体内三次元空間(特に微小な管内)における転移のメカニズムは、学者の注目を集めていない。
姜教授は、このほど発表した動物細胞の体積および圧力を動的に調整する基本模型に基づき、ジョンズ・ホプキンス大学の協力者と理論的な予測と実験・検証を進めたところ、二次元の表面上の細胞の転移とまったく異なる、細胞の粘着に依存しないがん細胞転移の新しいメカニズムを発見・証明した。細い管の中で、水分子とさまざまなイオンががん細胞の前端部から細胞に入り、後端部から細胞を離れることで、がん細胞全体の前進運動という新しい細胞運動を起こす。これは水分子とイオンの移動が、癌細胞の転移に対して重要な役割を発揮していることを裏付ける。
姜教授は、「この研究成果は、がん細胞の体内における転移・拡散の過程を理解する一助となり、がんの予防・治療などの研究にとって、非常に重要な科学的意義と臨床応用の価値がある」と語った。(編集YF)
「人民網日本語版」2014年4月28日
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