鑑真記念堂前にある石灯籠脇に付けられた温家宝首相演説の言葉
◇文化に対する国境を越えた精神◇
慌ただしい揚州訪問であったが、今回、揚州市文物局長で揚州博物館長でもある顧風さんに、17年ぶりで再会することができたのは嬉しい収穫だった。顧風さんとは、私が毎日新聞の福島県いわき支局(当時)に勤務していた時、初めて知り合った。1993年、いわき市博物館で「揚州八怪展」が開催され、作品とともに顧風さんがいわき市を訪れていた。揚州八怪の作品が中国から搬出されて、海外で展示されるのはいわき市が初めてだった。清朝期に現れ、自由奔放な画法が当時としては、ヌーベルバークともいえる新風を巻き起こした個性的な文人画家たちの揚州八怪について、私も以前からいくらか関心があったので、何回か通って取材をするうち、顧風さんと親しくなった。
顧風さんは鑑真和上像の里帰りで、地元で迎える側の関係者として忙しかったが、市政府や全市民あげて歓迎した、という。鑑真和上と梁思成について尋ねると、「2人は文化に対して国境を越えた精神の持ち主だった」と評価した。自国の文化だけが栄えればよいというのではなく、相手の文化を尊重しながらともに発展しようという考えなのである。
鑑真和上は、中国国内だけでなく、東の陸のはてのそのまたずっと遠くにある島国の文化に思いを馳せ、日本で生まれた梁思成も、奈良や京都の建築物に中国・唐時代の面影を偲んでいたのかもしれない。2人の思想は現代の国際化や相互理解に通じる精神でもあると思う。(写真はすべて筆者写す)
「北京週報日本語版」2011年2月7日 |