揚州・大明寺境内にある鑑真記念堂内の鑑真和上坐像
◇「日中の道」を諭す和上の姿◇
学校でまとまって見学に来た中国人の中学生らしい生徒たちは、ガラスケースの鑑真和上の姿をちらっと横目で見た後、足早に通り過ぎて行った。私も日本で50数年前、中学校の修学旅行で奈良県の唐招提寺を訪れたとき、鑑真和上にそれほどの関心があったわけではなかった。社会科の歴史で習った事柄をおさらいする程度の認識しかなかった。もっとしっかりと記憶に留めておけばよかったと今更後悔しても仕方のないことである。
里帰りした和上像の姿をはっきりと見ることはできなかったが、私が初めて中国を訪れた33年前、鑑真記念堂の和上の坐像ははっきりと記憶にある。
1977年2月、日中農業農民交流協会訪中団の同行記者として初めて中国を訪れた。上海から入り、南京、西安、大寨、揚州、北京を訪問した。初めて見る中国に緊張と好奇心と連日の移動でかなり疲れたが、記念堂の中で目を閉じてゆったりとした坐像を見て、何か心が落ち着くような感じがした。日中の国交が回復してから5年近くたっていた。
記念堂の和上の姿を見て、33年前、癒されるようなほっとした気分を、今回もまた同じく体験することができた。私はそれほど宗教心があるわけではないが、記念堂内の和上の坐像を見ていると「日中の道をしっかり守っていきなさい」と諭されているような気がしてきた。
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