東洋で生まれ、西洋で育ち、中国人の顔を持ち、ヨーロッパ人の発想を持つ監督として、YanTingYuen氏は、日本で撮影していた時にカルチャーギャップでいくつかの困難にぶつかった、と率直に言った。「私たちの日本人通訳は夫がオランダ人の、半ヨーロッパ人とも言える人で、実際にはヨーロッパ人の発想を比較的理解できる人なのだが、彼女はいつもいくつかの選択肢だけを紹介し、どのように選ぶべきかを説明してくれない。日本で撮影する時間は14日間しかなかったため、私たちは運転手を1名雇って東京から神戸、また北海道などまで行く必要があった。通訳は私に選択肢を2つ紹介してくれた。運転手Aは、料金は比較的高いが、A地からZ地まで、さらにB地まで、どこにでも行ける。一方運転手Bは、料金はとても安いが、A地からB地に行き、それからC地へと、道順に行く。私はインディペンデント映画の製作者で多くの資金がないため、Bの運転手さんを選んだ。A地とB地で取り終わった後、時間が足りなかったので、直接Z地に行きたかったが、その運転手さんは、もらった料金ではA地からB地、さらにC地まで行けるだけで、直接Z地までは行けない、と言った。私は彼の回答が理解できなかった。というのは、直接Z地へ行くことはむしろ彼の多くの時間と精力を節約できると思ったからだ。運転手とは全く意思の疎通ができなかったので、最後にわれわれのスタッフが地下鉄でZ地へ行くよりほかなかった。これはカルチャーギャップがもたらした問題かもしれない」とYanTingYuen氏は言う。
最後に、一番好きな村上作品は何か、もし村上春樹氏の小説を映画化するチャンスがあれば、どんな小説を選ぶかを聞くと、「村上春樹氏の1つの作品を好きな人が2人いたならば、好きな箇所はそれぞれ異なるかもしれない。私は『ねじまき鳥クロニクル』が一番好きだ。村上作品の映画化については、私は短編小説を脚色するかもしれない。たとえば『東京奇譚集』。彼の長編小説はいつも500ページを超えており、10時間でも撮りきれないかもしれないから」と述べた。
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YanTingYuen氏プロフィール
中国・香港で生まれ、5歳のときに両親と一緒にヨーロッパに移住。その後、ヨーロッパで成長し、教育を受ける。アムステルダム大学を卒業し、ジャーナリズム学科の修士学位を取得。助手としていくつかの映画・テレビ作品の製作に参加したことがある。ドキュメンタリー映画「Yang Ban Xi, the 8 model works(模範劇――8つの典型的な作品)」は、2005年サンダンス映画祭の審査員大賞候補にノミネートされ、また2007年モントリオール国際映画祭の最優秀脚本賞を受賞。ドキュメンタリー映画以外に短編映画・マルチメディア作品を監督したこともある。彼女の作品が劇映画とドキュメンタリー映画の中間にあるのは、彼女がややねじれた形で現実を描き出すという表現手法を偏愛していることを反映している。
「北京週報日本語版」2009年8月24日 |