本誌記者 繆暁陽
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ドキュメンタリー映画「Dinner with Murakami」の監督・Yan Ting Yuen氏
日本の有名な作家・村上春樹氏は、文章の風格が独自の特色を持つだけでなく、その行動も他人と異なり、いかなる作家組織にも属さず、公の場に現れるのが嫌いで、多くの人からみて、とても神秘的な人物である。しかし、ドキュメンタリー映画「Dinner with Murakami(村上春樹と夕食を)」の監督・YanTingYuen氏からみれば、村上春樹氏はユーモアに富んでおり、ひいては隣に座って一緒に笑える人でさえある。
8月11日、日本国際交流基金会北京日本文化センターでドキュメンタリー映画「Dinner with Murakami」の上映イベントが開催された。中国で生まれ、ヨーロッパで育った監督がなぜ日本の作家を選んで描くのか。上映イベント終了後、YanTingYuen監督が記者の取材に対し、『村上春樹と夕食を』の舞台裏を語ってくれた。
このドキュメンタリー映画の撮影目的について、YanTingYuen氏はこう言う。「私は中国・香港で生まれ、5歳の時に両親と一緒にヨーロッパに引っ越し、今はオランダ・アムステルダムで暮らす、インディペンデント系ドキュメンタリー映画の製作者だ。ヨーロッパでの村上春樹氏の人気はアジアほど高くはない、或いは、彼がヨーロッパで有名になった原因とアジアで人気がある原因は異なると言えるだろう。このドキュメンタリー映画に繰り返し現れる言葉は“個人主義”だ。アジアの観衆にはこの“個人主義”の意味が分かるだろうが、ヨーロッパ人から見れば、日本人は同じような服を身につけたお行儀の良いサラリーマンかもしれない。いっそう多くのヨーロッパの観衆に村上春樹氏が描く日本という世界を理解してほしいと思い、このドキュメンタリー映画を撮った」。
2005年末から2007年のドキュメンタリー映画完成まで、YanTingYuen氏はずっと手紙などを通じて村上春樹氏と連絡をとってきた。村上春樹氏に対する印象という話題になると、彼女はこう言った。「村上春樹氏は、人々が近づけるような、また近づけないような感じを与えている。私が連絡を取ると、彼は、自分についてのドキュメンタリー映画を撮るというアイデアはとても面白いと思うが、非常に忙しい、2年後なら撮る時間があるかもしれない、と言った。私が、2年後ならこの映画の撮影に参加していただけるのか、と聞くと、彼は、たぶん少なくとも2年…と応じた。このように何回かやりとりしたが、彼はいつも断る理由を持っているようだった。当時、私はすでにオランダ映画基金から撮影用の基金を手に入れていた。関連する映画人と相談した後、私たちは村上春樹氏本人が撮影に参加する可能性があまり大きくないと思ったため、先に撮影し始め、最後に彼が参加できるかどうかを待ってみた。映画の冒頭のシーンで私がレストランで村上春樹氏に宛てて書いた夕食の招待状は、本当に村上春樹氏本人に送ったものだ。私は大量の資料を収集し、村上春樹氏に対する印象について、多くの関連する専門家、一般読者に取材した。研究と撮影の全過程はそれらの経験を吸収するようなもので、理解が深まるに従い、最後に感じたのは、村上春樹氏はユーモアに富んでおり、ひいてはともに大いに笑える人物であるということだった。彼は自分のイメージを守る面でゲームをするような態度をとる。私たちは彼に近づけないのではなく、通常は彼本人を探し出せないだけだ」。
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