安 子
ここ数年来、官僚が職権を乱用して私腹を肥やし、発覚後に大金を持って海外に逃げる事件がたびたび起きているが、こうした問題をいかに解決して当事者を処罰するかが社会の焦点となっている。
公安部の武和平スポークスマンは会計検査署と5月23日に共同で開いた記者会見で、「海外逃亡で処罰を免れようとする刑事事件の容疑者は誰であれ、最終的に法的処罰から逃げることはできない。海外逃亡中の密輸事件を起こした頼昌星容疑者も法的制裁を受けるのは、「時間の問題に過ぎない」と強調した。
公安部経済犯罪捜査局の高峰副局長によると、海外に逃亡中の経済犯罪の容疑者は現在800人、そのうち320人がここ数年の間に相次いで逮捕されている。事件にかかわる金額は約700億元に達した。
暫定統計によると、2003~2005年、国家会計検査署(出先機関も含む)が公安機関に送検した事件は計212件、関係金額は421億5100万元と5645万ドル、容疑者は502人と、事件の件数は増加の傾向にある。とくに金融や経済貿易分野で多発しており、金額は会計検査署が摘発した事件の総額の86%以上を占める。
2005年には、海外へ逃亡した経済犯罪の容疑者53人が公安機関に逮捕された。
高副局長は「対外開放が進むにつれて、外国人が絡む事件や容疑者の海外逃亡事件が増えつつある。各公安機関は事件の調査、不法取得品の返還、犯罪者の逮捕、情報交換、業務の指導などで海外の関係機構と効果的な協力を展開している」と強調する。
頼昌星容疑者の送還に期待
頼昌星容疑者は福建省廈門市遠華グループによる密輸事件の主謀者とされる。密輸金額は100億ドルにも上り、1949年の建国以来最大の経済犯罪だ。同容疑者は妻と子供3人を連れて1999年8月、観光を装ってカナダ・バンクーバーに逃亡。その後、政治亡命難民資格の取得を求めていた。2001年11月、カナダ政府は同容疑者をバンクーバー郊外の家に軟禁した。
「遠華事件」の審理では、容疑者10数人が死刑または執行猶予付きの死刑を言い渡されたが、主犯格の容疑者は国外へ逃げていた。中国で裁判を受けさせるため、中国政府は同容疑者夫婦の引き渡しをカナダ政府に要請してきた。
カナダ最高裁は2005年8月に頼昌星氏と家族の難民資格申請を拒否。その後、関係機関は送還によって本人が受ける身の危険性について検討を始めた。
今年5月18日、カナダ国境サービス局のスポークスマンは「カナダ連邦裁判所が頼原告の上告を棄却した場合、我々は5月26日に原告の送還手続きを本格的に進める。移民部はすでに送還による身の危険性の検討を済ませており、送還に必要な書類なども整った。連邦裁が棄却すれば、原告は26日に国境サービス局に来て送還を受け入れることになる」と発表した。
カナダ連邦裁は5月31日、原告の送還について審理した。そして6月1日、本国送還の執行は暫定的に見合わせるとともに、送還による身の危険性に関する頼原告の再審査の請求を受け入れるかどうかを審議、決定するとの判決を下した。判決文は、頼昌星原告の送還の延期は臨時的な決定であり、有効期限は連邦裁が再審査請求を受け入れるか否かを決定する期日までとする、としている。
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