日本の大地震は一部の中国製造業企業のグレードアップを加速させただけでなく、日本製造業企業の中国への移転をも加速させている。
日本最大の自動車制御システムサプライヤーであるADVICS株式会社はこのほど、ADVICS自動車制御システム中国研究開発センターを設立すると発表した。また、時をほぼ同じくして、日本最大の情報通信関連資材メーカーである日東工業株式会社も、中国の子会社への増資を発表した。これにより、同社中国法人の資本金は従来の120万米ドルから1550万米ドルとなった。
これらの動きに関して、業界では、日本製造業が中国への移転を加速させているシグナルだとの見方なされている。これまでと違うことは、日本が「機密」だとされてきたコア技術を、部分的に中国に移転していることである。
2つの要因が重なった
レベッカ科技実業有限公司の穆書声CEOは「第一財経日報」のインタビューで次のように述べた。「現在、日本は(中国への移転を)加速せずにはいられない。一つは、日本のメーカーに対する中国の依存度は高く、地震発生後、主要部品と電子チップなどが大幅に不足したことが挙げられる。これらの不足をすぐに埋め合わせることは難しく、中国国内の多くのメーカーが現在、代理業者を探している。もう一つは、中国の一部のメーカーがこれらの不足やニーズに対応すべく、グレードアップを図っていることが挙げられる。日本のメーカーはこれを脅威と感じている」
日東工業株式会社の加藤会長は記者に対し、「日東工業は日本に工場を8か所もっているが、その内2か所が被災してしまった。これは同社が中国に増資をした大きな原因である。そのほか、中国の製造業の発展が速い事も、中国へ増資した重要な要因である」と述べた。
米国の経済コンサルティング会社、HISグローバルインサイトがこのほど発表した研究レポートによると、中国は2010年、世界の製造業の生産額の19.8%を占めて、世界一の製造業大国となった。今後も、中国の製造業は成長し続けるという。
業界関係者は、地震後、日本は産業の移転を加速させているが、多くが中国製造業の急成長にあやかろうと狙ったものであると指摘した。
中国の税関総署が発表した2010年中日貿易の分析報告によると、昨年、日本からの機械・電気製品の輸入額は1199億8000万元、日本からの輸入総額の7割近くを占めた。商務部の姚堅報道官はこれまでに、日本は我が国第三の貿易パートナーかつ第一の輸入市場であり、中国の輸入総額の12.6%を占めていると述べている。また、多くの日系企業が中国で生産や出資を行っており、大地震は両国の貿易と製造業への投資に影響を与えそうである。
日本は中国に対し、主にハイテク製品、電気設備、精密機器などを輸出している。地震により石油化学、電子、自動車部品の供給が激減し、また、交通がストップしたことで、日本の産業は正常に運営することが難しくなった。これにより発生した供給不足は、中国の関連産業に多大な影響を与えた。
業界関係者は、これも日本製造業企業が中国への移転を加速させた要因であるとの見方を示した。
コア技術は移転されるか?
日本がコア技術を移転させるかどうかについては、懐疑的な見方が強い。日本はこれまで「外延式」の発展戦略を採用し、コア技術の開発は本国で行い、労働集約型あるいは資源集約型製品の生産工程を発展途上国に移転するだけであった。
加藤氏は取材で、最も核心的な技術も中国に移転すると明らかにした。ADVICS株式会社も、中国研究開発センター設立発表会において、中国で最先端技術の研究開発を拡大すると発表している。
実際、今回の地震が日本の先端技術製品の優位性喪失を招く可能性はある。「例えば、自動車、電子パネル、電子チップなどの製品の供給不足による影響はさほど大きくない。世界の同業者のシェアを拡大させ、日本のメーカーのシェアを減少させるだけである。なぜなら、これらの製品はもはや日本企業特有のものではないからである。」業界関係者はこのように述べた。
中国の製造業の代理業者は記者に対し、「多くの主要部品は中国にも存在する。例えば、通信機器用ラックなどは、中国で完全に製造することができる。日本の優位性は主に製品機能の安定性・信頼性にある」と述べた。この代理業者は、技術の急速な発達により、日本製品の優位性は脅かされており、これも日本の製造業企業がコア技術を含めて、中国への移転を加速している原因であるとの見方を示した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年4月13日
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