エッティンガー欧州委員(エネルギー担当)は15日にブリュッセルでEU加盟国のエネルギー閣僚や関連業界代表による緊急会議を開き、日本の放射能漏れ事故に対する評価を行うとともに、EU内の原子力の安全と発展について議論した。エッティンガー氏は「日本の原子力漏れ危機は全世界の原子力エネルギーの発展に根本的な影響を与える。必要ならEUは予防的措置を講じ、エネルギー政策の調整を行う」と表明した。
現在EUではエネルギー全体の14%を原子力が支えている。稼働中の原発は計143基あり、フランス58基、英国19基、ドイツ17基、スウェーデン10基、スペイン8基、ベルギー7基となっている。このほかイタリア、ポーランド、チェコ、スロバキア、フィンランド、スウェーデンは新たな原発の建設を計画している。EUはすでに原子力の安全に関する早期警戒システムを構築している。
オーストリアのベルラコビッチ環境相は14日のEU環境相会合で「債務危機の際に銀行に対して行うように、全ての原発に対してストレステストを行い、原子炉の安全性が基準に達しているかどうか検査すべきだ」と提言した。フィンランドのカタイネン財務相は「結論を出すのはまだ時期尚早だ」と指摘。英国、フランス、イタリアの代表は原子力の発展について冷静を保つよう呼びかけた。
EUは09年に「原子力安全指令」を公布し、国際原子力機関(IAEA)の原子力安全基準を守る法的義務を加盟国に課した。ヘデゴー欧州委員(気候変動担当)は「何が起きようと、原子力は依然として主要エネルギーの1つだ。EUは各加盟国の原子力の安全を確保するために必要なあらゆる措置を講じる」と述べた。
日本の放射能漏れ事故を受けてEUでは激しい議論が起きている。現有の原子力政策の見直しと調整を行う国もあるし、クリーンエネルギーとして原子力を推進し続けることに疑問を投げかける市民もいる。
ドイツのメルケル首相は15日、原子力発電所7基の一時停止を発表した。この前日、メルケル首相は昨年立法措置で決定された、既存原発の稼働年数を平均12年延長する計画について、法改正はしないものの3カ月間凍結することを発表した。ドイツではすでに1基が稼働停止しており、稼働原発は9基となる。メルケル首相は原子力の安全について今月24潤オ25日のEU首脳会議で議論する考えを示した。
フランスのサルコジ大統領は14日、「脱原発は論外」と発言。環境・持続可能な発展・交通・住宅担当相は「フランスの原発には昔から甚大な自然災害への対策マニュアルがある」と強調した。フランス電力公社の原子力担当は「フランスの原発は安全だ」と表明した。だが同国では反原発デモも行われている。
米CNNは14日、同国の原発104基の一部が沿岸部や地震多発地帯に位置することを報じた。議会やメディアからは国内の原子力政策を見直し、原発の新規建設は一時中止すべきとの声が上がっている。ホワイトハウスのカーニー報道官は14日「オバマ政権は原子力をクリーンエネルギーを推進し、国の将来の競争力を高める原動力の1つと位置づけている。この政策が日本の放射能漏れ事故によって変わることはない」と表明した。米政府は原発の新規建設にすでに180億ドルを計上しており、さらに360億ドルを追加する計画だ。
ロシアのプーチン首相は14日「日本の放射能漏れ事故のロシアの原子力発展計画への影響はない」と表明した。この姿勢表明は、原子力分野の協力相手を安心させることが目的の1つだ。ロシアは原子力分野で多くの国々と重要な協力プロジェクトを進めている。ロシアでは現在、原発10基(発電機31台)が稼働しており、原子力発電は全国の総発電量の16%を占める。
ハク国連事務総長特別代表は14日、IAEAの天野之弥事務局長が潘基文国連事務総長に「今回の放射能漏れは微量で、健康への影響は少ないはずだ」と伝えたことを明らかにした。国連からは人道問題調整事務所から派遣された災害評価チーム7人がすでに日本に到着している。(編集NA)
「人民網日本語版」2011年3月16日
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