秩序安定に功奏したBCM
地震など危機的状況のダメージから事業をどう回復するかについて中国でコンサルティングを行うインタリスク上海(InterRisk Consulting(Shanghai)Co.,Ltd.)の総経理で、日本の防災体制に詳しい海司昌弘(Masahiro Kaishi)氏は、「BCM(Business Continuity Management)がある程度普及していたことが一定の功を奏した」と指摘する。BCMは事業継続マネジメントという概念で、英国規格協会(British Standards Institution)の定義によると、「組織を脅かす潜在的なインパクトを認識し、利害関係者の利益、名声、ブランド及び価値創造活動を守るため、復旧力及び対応力を構築するための有効な対応を行うフレームワーク、包括的なマネジメントプロセス」。日本では2000年代半ばから、経済産業省が中心となって地方自治体や企業への導入を進めている。
「1995年の阪神淡路大震災、2005年の新潟県中越地震の経験をふまえ、地方自治体や企業でBCMを導入するところが増えた。BCMでは、東海地震や東南海地震を想定し、災害発生後にどう動くか、重要なことは何か、前もって準備するリソースは何か、などを事前に練っておく。災害が来ること自体は拒めないが、震災後の復旧をどうするかを事前に検討し、アクションプランを考えることはできる」と海司氏は言う。
「中国では『危機管理』という言葉が流行っているが、BCMは危機管理よりもさらに大きな括り。危機的状況に直面した後で手段を考えるのではなく、発生前に動く、事前にアクションプランを練っておくのがBCM。前もって準備しておいて損はない」。海司氏はBCMは中国でも導入できると考えている。
長年かけて確立してきた防災体制、防災訓練などで身についた防災行動、過去の大震災の教訓を踏まえ普及が進むBCM。国、自治体、企業、そして個人レベルにまで深く浸透した防災体制が、未曾有の大震災の中でも「災害に強い日本」を支えた。
「北京週報日本語版」2011年3月16日
|