~生息数が激減、大地震後に異常現象現れる~
斎藤文男(南京大学日本語学部専家)
日本でスズメが激減しているという。「20年間に6割減少」「50年間で9割減」などと報道されている。日本の象徴・富士山周辺では東日本大震災以後、異常現象が現れ、大地震と連動して噴火する兆候ではと不安が広がっている。スズメと富士山は直接関係ないが、どこかで何か異変が起きているのだろうか。
今年1月、日本に一時帰国して気がついた。埼玉県狭山市の自宅庭に、いつもは大勢でやってくるスズメたちが、私が日本に滞在していたほぼ1カ月間、一羽も来なかった。初めての経験だった。代わりにメジロが夫婦なのか決まって2羽でやって来て、鉢に置いたミカンやリンゴを啄んでいた。成田空港から南京に戻る際、機上から見えた富士山は、通常なら全山真っ白なのに雪肌は中腹までしかなかった。おぼろげな不安感だったが、南京・専家楼に戻り、窓辺にやってくるたくさんのスズメたちを見て、何かほっとした。
南京の専家楼窓辺でくつろぐ中国のスズメたち
◇20年ほど前からスズメが減少◇
日本でスズメが減っている、という話は20年ほど前からある。私は毎日新聞の埼玉県所沢通信部に在籍していた時、県内支局の同人と一緒に「さいたま動物記」を、1999年7月から約2年間にわたって連載した。昆虫類から哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類など61種類の動物を取り上げた。その時書いた「スズメ」の項でも、「街中から確実に数が減っているようだ。」と指摘する都市鳥研究家の声を紹介した。スズメのようにごく身近にいる鳥が減っていることは、人間に対する警告でもある。そう考えて私は、この連載の中で次のように指摘した。
「人間の勝手な都合で、動物を益鳥にしたり害虫にしたりしている面もある。(日本で)絶滅したトキも数百年前まではどこでも普通に見られた。スズメだって、もし21世紀中に絶滅しそうになったら貴重な鳥になる。今から共生の方法を考えておく必要がある。」(「さいたま動物記」毎日新聞埼玉支局編、毎日新聞社発行、2001年)
この考えは今でも変りはない。スズメの減少が顕著になっているのなら、急いで原因を究明し、保護対策を立てなければ、トキの二の舞になってからでは手遅れになる。
スズメは身近でありふれている鳥なので、注目して研究する人はあまりいない。白鳥などと違って正確な生息個体数や生態なども良く分かっていないのが実情だ。しかし、ここ数年「スズメをあまり見かけなくなった」という声が各地で聞かれるようになったことから、スズメにも関心が寄せられるようになった。「国内のスズメの個体数が過去約20年間で約6割も減ったとする報告を立教大と岩手医科大のグループがまとめた。」(朝日新聞2011年11月17日)というスズメのニュースが記事になった。グループは、1987年から2008年までの全国鳥類標識調査のデータを分析して減少率を推定した。グループの研究員は、別な調査記録からも、「1990年以降スズメが5~8割減少した。」という推定を出している。このため、「従来と異なるデータで同じような結果が出た。スズメは確実に減っていると言えそうだ。」と話している。
2009年2月3日の毎日新聞でも、「国内のスズメの生息数は1800万羽にとどまり、最近20年足らずで最大80%、半世紀前との比較では90%も減少したとみられる。」という大学研究員の調査結果を記事している。
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