~地元・狭山市でミニコンサート開く~
斎藤文男(南京大学日本語学部専家)
春節の休みを利用して日本に一時帰国した。二胡の演奏を師事している董金明老師も、たまたま同じ時期に日本に滞在していた。私も董老師も、南京市から「文化交流民間大使」の称号を授与されている。「民間大使」の役目を果たそうと、私が住んでいる地元の埼玉県狭山市で小さなコンサートを開いた。二胡とハーモニカの合奏で日本と中国の曲をいくつか演奏した。集まった地元の人たちは、初めて体験する二胡独特の哀愁を帯びた生演奏のメロディとハーモニカの合奏を珍しげに聴き入り、ささやかな日中草の根交流となった。
◇中国文化の香りを音楽で◇
ミニコンサートは狭山市柏原の自治会集会所で1月30日に開いた。私は一時帰国したあと、妻に依頼して会場を探したり、「南京市文化交流民間大使による“日中ミニミニコンサート”」と名付けたチラシを急いで作ったりした。
ミニコンサートで演奏する董金明老師(左)と筆者 (斎藤和子写す)
「日本と中国が国交を回復してから今年は40周年となります。2人の民間大使が日本に滞在している機会を利用して、ミニコンサートを開催することになりました。」と、開催趣旨をチラシの中にしたためた。地元の人たちにとって、日中の国交回復40周年や南京市の民間大使とは直接の関係はまったくなかった。しかし、私は民間の小さな文化交流が積み重なって、国同士の相互理解が深まっていくものだと確信している。中でも音楽は、政治や経済などとは違って、心で相手の国を感じとり理解できるものだと思う。そんな考えから急きょ開催の準備をした。
私が住んでいる住宅地区は、埼玉県の西部地域にある入間川沿いを民間の不動産会社が開発して分譲住宅地にしたものだ。川の上流の南西には、富士山と秩父連峰が間近に見えるこの地域が一目で気に入り、分譲開始された1981年、住宅をローンで購入しこの地区に引っ越してきた。
以来、31年間となるが、私は自宅を購入して間もなく単身赴任となり、定年退職後は南京に単身で長期滞在している。自宅は20年間あまりも留守にしている。赴任地からは年に1、2回自宅に戻る程度で、地元の人たちともほとんど交流がなかった。地元になんの貢献もしていないので、せめて中国文化の香りを味わってもらえればという考えもあって演奏会を開いた。
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