◇359日間休みなく働く◇
これらの人たちと対照的なのは、南京市内で私が数年来通っている副食品市場で働く女性たちである。市場は国営となっているが、中で商いをする80人近くの店は個人経営である。1カ月約1000元を半年ごとにまとめて支払い、野菜を中心に肉類、魚類、カニ、タマゴ、米、果物、豆腐などを売っている。
「若い時はもっと美人だった」と笑顔で語る
私は1週間に1、2回、買い物に行くが、今では買う場所が大体決まってしまった。思い出してみると、その場所は初めて行って買った時、店の人が笑顔で応対してくれた場所だった。売っている人は9割方女性である。笑顔に誘われて何回か通っているうちに、いつの間にか決まった店のなじみ客になってしまった。後から気がついたのだが、他の人たちもみな笑顔でお客と応対をしていた。私が初めて行った時は、たまたま笑顔がなかっただけだった。
店はいつ行ってもやっている。土曜、日曜、祝祭日でも平常通り営業している。朝は6時から、冬場は午後7時半まで、夏場は薄暗くなる8時半まで開いている。1日の労働時間は13時間半から14時間半である。休みは春節から6日間だけで、1年359日間休みなく働いている。それでも彼女たちに不満の表情はない。活き活きと毎日お客さんに笑顔で接している。
◇十六夜の月明りの下で◇
11月の立冬から4日後の土曜日、朝5時半に市場に行ってみた。十六夜(いざよい)の月が西の空に輝いていた。夜明け前だったが、女性たちはすでにそれぞれの店で商品の整理をしていた。トウミョウやホウレン草など葉物野菜は不要な部分を手早く取り除き、チンゲン菜は根元部分を揃えて並べる。きれいに並んでいると購買意欲も強くなる。準備中に笑顔はないが、実に楽しそうにてきぱきと動いている。
手早く慣れた手つきで黙々と野菜を整理する姿にも美しさが漂う
正午まで立ちっぱなしでお客の応対をしたあと、午後3時ごろまでは、夫と交代する人が多いようだ。未明に仕入れをした夫も午前中一休みしたあと、店に出るが、妻ほどの働きはしていない。笑顔もなくお客に声も掛けない。中には下を向いて新聞を読んでいる人もいる。午後3時から夕方にかけて女性の笑顔とともに、並んだ商品もどんどんさばけていく。これからはダイコン、ハクサイ、サトイモなど冬野菜が美味しくなる季節だ。ダイコンは鮭、コンブ、ニンジンなどと一緒に「石狩鍋」に、コンニャク、チクワ、コブと煮てオデンに。ハクサイは漬物か鍋の具に。サトイモは煮っ転がしに、などと考えながら笑顔と一緒に買い込んでいく。以前の国営スーパーにいるような仏頂面の女性店員のようだったら、これほど購買意欲は沸いてこないだろうと思った。
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