斎藤文男 (南京大学日本語学部専家)
◇笑顔だったならば……◇
笑顔でお客の応対をする野菜売り場の女性
中国人の女性はみんな美しい。お世辞ではない。どの女性もみな西施、楊貴妃、王昭君、貂蝉(ちょうせん)の子孫ではないかと思うほどだ。あるいは先祖が虞姫か卓文君かもしれない。誇張ではない。笑顔ならばというただ一つの条件付きでのことである。百貨店の店員、レストランの服務員、旅客機の客室乗務員。ほとんどの人たちに笑顔がない。黙々と任務をこなすが、けだるい態度や怒ったような表情でいやいやながらやっているようである。笑顔になればみんな美人になるのに、なぜ面白くない表情をしているのだろうか。私がいつも野菜や魚を買いに行く市場の女性は、いつも笑顔で美しく新鮮な表情だ。
◇アンケートに答えたら◇
数年前、中国の国内旅行で飛行機を利用した。機内の雑誌を見ていたら、乗っていた航空会社へのアンケートがあった。意見を書く欄があったので、「同じ会社の国際線の客室乗務員は笑顔で勤務しているのに、国内線ではなぜ笑顔がないのか?」と書いて出した。この時に乗った同じ会社の国際線は日本に帰国するたびに何回も利用している。その時の笑顔の態度が印象に残っていたので、国内線の乗務員の無表情な態度が気になった。
間もなくして主任らしき女性の客室乗務員がやって来た。「貴重なご意見をありがとうございました。これからは笑顔で勤務するようにいたします。」と丁寧な言葉で話した。しかし、話す表情に笑顔はなく真剣だった。言葉通りに笑顔で話してくれたら納得したのだが、これからも笑顔での勤務はないだろうと感じた。アンケートの意見が会社の上司に知られることを心配していたのだろうか。スタイルも顔立ちも申し分ないのに、このような女性がにこやかな笑顔で機内サービスをしてくれたら、この会社の便の利用者はぐっと増えるだろうに、と残念に思った。室内の機能や飛行時間の短縮などより、笑顔の接客が最高のサービスになる事を、航空会社の幹部は気がついていないのだろうか。
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