~中国絵画芸術国際研究討論会に参加して~
斎藤文男(南京大学日本語学部専家)
2011“中国百家金陵画展”の一環として「中国絵画芸術国際研究討論会」が10月15日、南京市内のホテル「紫金山荘」で開かれ、私も講演者の一人として参加した。この中で私は、大人も子供も絵本をたくさん読んでほしいと提案し、中国文化の振興・向上を願った。絵画や芸術は画家や作家だけが創り上げるのではなく、それを鑑賞する人があって成立するものだ、と思うからだ。鑑賞者の素養や感受性を高めるために、子供の時から絵本に親しみ、画家の方々も絵本にどんどん絵を提供してほしい、と会場の画家や美術関係者に訴えた。子供の時に絵本から得た感動や鑑賞力は、その後の人格形成にも大きく影響するはずだ。そのことが、文化国家を振興する基盤になるのではないか、との考えからだった。話を終わったあと、「よかった」と言って、握手を求めて賛同する人が多かったのは心強く感じた。
国内外の学者や専門家が参加して初めて開かれた美術創作に関するシンポジューム
◇8カ国・地域からも参加◇
画展は2005年から毎年開催され、今年で7回目だが、中国内外の美術絵画関係者を招待しての研究討論会は今年初めて開かれた。中国美術家協会、江蘇省委員会宣伝部、省文化庁、省文学芸術界連合会の共同主催で、中国の専門家や学者ら30人余りのほか、フランス、イギリス、ドイツ、オランダ、カナダ、ニュージーランド、日本、台湾の計8カ国・地域の学者や美術関係者が参加した。15日、16日の2日間にわたり、32人が1人15分間ずつ講演。現代美術創作におけるリアリズムの意義▽中国国画、油絵の現状と国際的地位と影響▽中国国画の審美価値と科学判断の形成▽中国美術作品の国際化と趨勢などについてそれぞれの考えを披歴した。
私は「現代美術創作におけるリアリズムの意義」と題して、主に鑑賞する立場から要旨次のように話した。
人はよく綺麗な風景を見ると「まるで絵に描いたようだ」と形容する。逆に素晴らしい絵を見て「まるで本物の風景みたいだ」と感動する。「風景を見て絵だと言い、絵を見て本物の風景だ、というのはなぜなのだろうか」これは実際の風景や描かれた絵画の中にあるもの以上のものを、人は求めようとする欲求があるからではないと考えた。そして、3人の画家と一人の板画家の作品と人となりについて考察した。
◇写実から摂理を引き出す◇
始めは、スペインでリアリズム絵画を探求して、4年前53歳で亡くなった磯江毅(1954~2007年)の「新聞紙の上の裸像」という作品を取り上げた。新聞紙を2枚、大きく広げたところに裸婦が横になっている絵である。女性の肌の光と影、下に敷いた新聞の文字や写真、広告などすべて鉛筆で写実したものだった。この絵を見た時、私は写真だと思った。しかし、すべて手で描いたものだと知り驚きと感動に震えた。写真だったらこのような驚きや感動はなかっただろう。磯江はなぜ写真のような忠実に写実した絵を描くのか。「空間と物の存在の中から、摂理を見出す」ためだと言っている。人物や物の表面や形を正確に描くだけではなく、その奥にある自然の摂理を引き出そうとしているのだ。
|