◇「急がば回れ」の精神が大切
また、ある学生は、日本語を勉強して、漢字の逆移入があることを知り驚きました。中国人が何気なく使う「任命、主義、生産、資本、経済、電話、電報、電車、解放、労働者、胃潰瘍(かいよう)」などが日本製だったのです。中国人には、日本は中国が文化を教えた「文化の弟」との意識が強くありますが、実は、相互の文化が歴史とともに融合し成長してきた、ということをその学生は理解してくれたようです。
若者たちは互いに交流すれば、すぐにも理解し合うことが可能です。考えが柔軟で相手の文化を受け入れようとする好奇心があるからです。ただその機会を作ってやればいいだけです。日中交流2000年の歴史を土台に、この際、目標を3000年のかなたにおき、若者たちを軸にした文化交流を質、量ともに増やしてみてはいかがでしょうか。こういう時こそ、両国のことわざにある「急がば回れ」(「欲速則不達」=功を急げば目的を達することができない)の精神だと思います。( 2010年10月14日毎日新聞「記者の目」から)
斎藤文男 プロフィール
元毎日新聞記者。1941年東京都生まれ。67年毎日新聞社に入社。青森、山形支局を経て、81年東京本社地方部編集記者。本社在勤中、中国語専門学校「日中学院」にて中国語を学ぶ。いわき支局長、所沢通信部長歴任。2001年、毎日新聞社を定年退職、同年10月、南京大学に「日語専家」として赴任。現在、同大日本語学部で「写作」「日本時事」「現代日本社会問題研究」などを担当。落語やハーモニカ演奏を駆使した日本に関する授業や、「面白雑学日語」などユニークな講義を行っている。南京滞在歴8年。2010年10月、南京市が設立した「第一回金陵友誼賞」を受賞。
「北京週報日本語版」2010年10月27日 |