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斎藤文男氏のブログ  
わが心の街~神秘的な拉薩~

南京大学日本語学部専家・斎藤文男 
 
 
ポタラ宮前に立つ筆者

 

中国の地図を見ていつも不思議に思った。西安から蘭州を経て北西部には嘉峪関、ウルムチ、カシュガルなど鉄路が伸びているのに、南西部は、西寧(シーニン)から格爾木(ゴルムド)で止まっているのだ。その先には拉薩(ラサ)があるのになぜ鉄路がないのだろう。北には崑崙(コンロン)山脈、南にはヒマラヤ山脈が連なり、“世界の屋根”と言われる地域であるにしても、チベット仏教の聖地である拉薩まで鉄路がないのは不思議だった。鉄路が届かない聖地はどんな街なのか。神秘に満ちた魅力一杯の街だろうと想像し、いつかは訪れてみたいと心に決めていた。

◇青蔵鉄路であこがれの地を目指す◇

2001年6月に青蔵鉄路第二期工事として格爾木~拉薩間が着工されたことを知ったのは、その年の10月、南京に長期滞在してからだった。工事が進むにしたがって、新聞、テレビで世界の最高所を走る天空列車として進捗状況が紹介された。ポタラ宮は写真などで見たことはあるが、周辺の街並みは想像するしかなかった。2006年7月1日、格爾木~拉薩間の開通式がテレビで中継された。待ちかねて、開通した7月下旬、西寧から青蔵鉄路であこがれの拉薩を目指した。

午後8時7分。西寧駅を出発すると、窓外に明かりはまったくない。夜空には満天の星が見える。こんな星空を見たのは、40年ほど前、日本で山登りをしていたとき、テントで寝ながら手が届きそうな空いっぱいの星を眺めて以来だ。

格爾木を過ぎたあたりで日の出になった。ここからは開通したばかりの新鮮な鉄路だ。やがて車窓には雄大な雪山が走馬灯のように次々と流れて行った。開通した鉄路の85%の965㌔は標高4000㍍以上の高山列車だ。最高所は唐古拉(タングラ)山口の5072㍍で、鉄路を走る列車としては世界一の高さである。車窓の雪山の頂上は鉄路から2000㍍以上も上にある。こんな高い所に地上があるのを見るのは初めてだ。

ポタラ宮を模して造られた拉薩駅

日本で最高峰富士山の標高は3776㍍。この鉄路の1000㍍も下にあることになる。車窓は5分間も目を離すと、まったく違った景色に変わってしまう。真夏でも純白のドレスを身にまとい、山肌の稜線もかなり急だ。20歳代にこの景色を目にしていたら、わが人生はまったく違ったものになっていただろう。あの雪の山肌にへばりつき、人跡未踏の頂上に必ず挑戦していただろうと考えた。

沿線の草原には北京オリンピックのマスコットになったチベットカモシカ3、4頭が、列車の過ぎ去るのをじっと見つめていた。360度見回しても人影はない。雪山、4000㍍を超える高原、初めて見る動植物。こんな地域に憧れていた自分を改めて感じた。

西寧から拉薩まで1956㌔、列車は1昼夜をかけて青蔵高原を横切り、夜11時、あこがれの拉薩駅に到着した。周囲は真っ暗で雰囲気は分からないが、「拉薩駅」という文字が目に飛び込んで来た時は、目指していた拉薩にやっと来たことを実感した。

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