◇日本の民族意識と桜の花◇
このほか、桜の花から、日本人の民族意識について書いた学生もいた。
「桜の花のように瞬間美を求め、生きる時には徹底して全力を尽くして生き、死ぬ時には生への執着を捨てて死に徹するのは、日本人の民族意識と一体となっている。これらは桜の花の影響を受けているのではないかと思います。」ぱっと咲いて、ぱっと散る花の潔さが、日本人の生き方を象徴しているのではないかと、推察したのは男子学生だ。
「中国人にとって、梅花は気が強いというシンボルだ。桜が与える瞬間美とは違うと思う。桜は弱々しい美であるが、梅の美は気丈な美である。どちらも人に与える美は同じであり、多くの人を花見に誘うのだろう。」春浅い寒さの中でも、それに耐えて咲く梅の花。暖気に誘われてから一気に開花する桜の花。中国人と日本人の美意識の違いを梅と桜の花に例えた学生も男子だった。
「桜は日本の武士道を代表していると思います。桜の花は満開になるとすぐに散ります。開花している間はずいぶん短いです。武士は一度失敗したら、きっと自殺するというのは桜と似ています。恥をかいたまま生きているより、死んだほうがいいという考えは武士の特徴であり、日本民族の特徴でもあります。ですから、桜は花であるとともに、日本民族精神の代表だと思います。」武士と桜を関連付けたこの女子学生は、「本物の桜を見たことはないけれど、テレビや映画で桜吹雪を見たことがあります。その美しさに感動しました。日本に行く機会があれば、きっと四月に行きます。」と本物の桜吹雪を楽しみにしていた。
◇連絡ない“桜吹雪”の体験◇
学生の桜に対する知識はほぼ間違いはなかった。毎年、数人が日本に留学に行く。言葉に不自由はしないだろうが、慣れない異国での忙しい留学生活の中では、1週間ほどの開花期間で最後の一瞬にしかない“桜吹雪”は、よほどタイミングを計らないと体験はできないのだろう。「念願の桜吹雪を体験しました。」という連絡は、残念ながらまだ誰からもない。
桜の花は弱々しいイメージだが、受粉しなければよほどの風でも落花はしない。虫たちのとりもちでめしべの柱頭におしべの花粉がつけば、虫を呼び寄せる虫媒花の役目は終え「落花帰根」となる。“花吹雪”は風によってもたらされるのではなく、昆虫の働きによって受粉が終われば、風はなくとも実現する。
桜の花の季節に、作文を書いた学生と日本で再会出来たら、“花はなぜ落ちるのか”について話し合ってみよう。南京で桜の花を見ながらこんなことを考えた。(写真はすべて南京市内で筆者写す)
「北京週報日本語版」2010年4月15日
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