◇家族的雰囲気や会話を楽しむ◇
教室代わりの日本料理店は、この10年間、閉店や移転などで転々と代わり、現在の日本料理店「水之恵」=南京市王府大街=は4店目だが、参加者は常に20人から30人がやってくる。
スピーチコンテストが行われる1カ月ほど前、私は日本語コーナーをのぞいてみた。この日も20人あまりの若者が集まり、日本人の講師と熱心に話し合っていた。授業料はなく一切無料である。参加も強制しているわけではない。出席をとるわけではなく、欠席してもとくにとがめず、すべて自由である。なぜ、このようにたくさんの人が集まり、10年間も続いているのだろうか。参加者数人に聞いてみた。
「このコーナーの雰囲気が、とても家族的なので毎週楽しみにしている」(日本語専攻の大学2年生女子)
「日本語だけでなく、日本人と直接会話ができるので、日本人のものの考え方や、精神的な面も学ぶことができるのがとても貴重な存在だと思う」(日本語専攻の大学3年男子)
◇日本人の対人関係マナーを学ぶ◇
参加者たちは、大学の教室にはない雰囲気や楽しさを求めて自然と集まり、学習効果をあげているようだ。私が訪れた時も、私が日本人の講師と話をしている時、女子学生が私に話しかけてきた。その時、日本人講師は、「今、私たち2人が話しているのだから、脇から話しかけては失礼になる。私たちが話し終わってからにしなさい」と、諭すように注意した。女子学生は素直に「はい、分かりました。すみませんでした」と謝った。
中国人の日常生活では、2人の会話に別な人が無造作に割り込んでくる場合が非常に多い。銀行の窓口やスーパーのレジでは、並んで待っていた人の仕事をしながら、別な行員やお客が話しかけてくるのに平気で応対している。私は金額を間違えるのではないかと、はらはらしながら見ているが、日本ではまずあり得ない。「こちらのお客様が済んでからにしてください」と必ず言われる。
女子学生は体験的に日本人の対人関係のマナーを学び、その後は、私と日本人講師の話が終わってから、私にいろいろ話し掛けてきた。
◇発足10年を記念してコンテスト開催◇
日本語コーナーには、日本語を専攻していない他学部の大学生や、社会人もやってきて、日本人を講師に独学で日本語を学び、日本の大学に留学している人もいる。ここで日本語を磨き、日本の企業に就職した人などもいる。
発足当時からコーナーを主宰していた柴崎さんから依頼され、今年1月から主宰者となっている安藤智文さん(57)=菱天(南京)精細化工有限公司総経理=が、発足10年になるのを記念してスピーチコンテストを開こうと発案・企画した。コーナーの講師となっている日本人や中国人が中心になり、3カ月前に実行委員会を結成して準備した。南京市人民対外友好協会、南京日本商工クラブ、南京日本人会の後援も得て、11月29日、ようやく開催にこぎつけた。
|