中国は着実に人民元改革を推進
人民元レートは中国の対外開放と経済発展にかかわる問題であり、中国政府は人民元切り上げ問題について慎重の上に慎重を重ねて対応している。周知の通り、一国の通貨の急激な切り上げは大きな危害を及ぼす。急激な人民元切り上げは中国の輸出を大幅に萎縮させ、中国経済に激しい打撃を与えるだろう。中国経済の構造が不均衡な状態にある今、人民元切り上げをゆっくりしたペースで進めていけば、中国経済の再均衡化は安定した方法で進行が可能になり、その過程で中国製造業は国内で新規顧客を獲得して海外顧客喪失失分を補うことができる。また同時に、失業率を合理的な範囲内に抑えることもできる。しかし人民元切り上げが急激すぎれば、中国経済は再均衡化を実現することができなくなる。輸出企業は破産か他国への移転かという抜き差しならない選択を迫られることになり、中国の労働者の大量失業を招き、世帯所得は悪化し、消費もそれに伴って低下していくだろう。温家宝・中国国務院総理は、「急激過ぎる人民元切り上げは大規模な失業と社会不安を引き起こす。中国はこれを受け入れることはできない」と指摘している。中国人民銀行の周小川行長は、「中国の為替レート制改革は漸進的なもので、『人民元改革』のスピードは中国の国際収支状況いかんで決まるものだ。人民元切り上げは順を追って漸進的に行い、中国の通貨改革は中国自身の歩調で進めていく」との考えを示している。
今後、中国の「人民元改革」は引き続き「主体的、漸進的、管理可能」の原則を堅持していく。中国のさらなる「人民元改革」推進は、情勢に応じて有利に導き、利を追求し害を避けるべきで、発生する可能性のあるマイナスの影響を最小限にするよう努めることが必要だ。①レート変動幅を確実に管理し、市場パワーにより人民元レートがオーバーシュートする可能性をなくす。②自国がイニシアチブを取ることを堅持し、人民元レートの秩序ある変動が中国経済のファンダメンタルズとマクロ調整の必要に合ったものとする。③人民元レート管理と調整において漸進的な方法を取るようにし、企業に構造調整のための時間を与え、企業が人民元レート変動の影響を徐々に消化できるようにする。産業の秩序あるモデル転換とアップグレードを促進し、中国企業全体の国際市場における競争力を保ち、就業・雇用をサービス業へと移していくよう導く。④投機的短期資本の監視と管理を強化し、ホットマネーの大規模流入が国内金融体系に大きなインパクトを与えないようにする。
この6年余り、人民元為替制度改革は主体的、漸進的、管理可能の原則に則り、自国がイニシアチブを取って秩序よく推進されており、全体として中国実体経済にプラスの影響をもたらし、マクロ調整に有利な条件を作り、また国内外の情勢変化への対応においても重要な役割を果たし、所期の効果をあげてきた。
総合的に言って、中国は人民元切り上げの経済金融リスクを十分に考慮し、日本円切り上げの悲痛な教訓を汲み取り、積極的かつ着実な対応策を取ってきた。さらに指摘すべきは、為替レートは国家の通貨政策の核心であり、他国によって決定されるべきではないということだ。中国経済は確かに輸出依存度低減のための構造転換、内需拡大など一連の問題に直面しているが、人民元政策は中国経済の長期的発展の必要に応じて慎重に決定を下すべきである。さもなければ、中国経済のみならず世界経済にとっても深刻な結果を招くことになるだろう。
「北京週報日本語版」2011年11月8日 |