このような背景のもとで、中国が直面する国際環境は、これまでになく複雑な局面である。外交面では、大きな成果を勝ち取ったと同時に、未曾有の挑戦に直面している。外交の成果では、サミットや万博、アジア競技大会を中心に据えたことで、責任を果たし、協力関係の構築をはかり、命運をともにするよき大国というイメージを打ち出し、また中国とその他の国々との全方位的な相互関係と交流における新しい時代を切り開いた。
こういった成果に比べると、2010年に外交面において直面した挑戦は、更に印象深いものであった。具体的には以下のような問題に分ける。まず1つは、中米関係の悪化である。初期のオバマ政権における蜜月期の後、中米関係は昨年に入ってから急激に悪化し、人権、貿易、台湾への兵器販売、気候変動、核拡散防止など一連の問題において、真っ向から対立した。2つ目は、中国と周辺諸国の間に緊迫状況が生まれたことである。釣魚島問題の再燃によって、近年来安定した中日関係が急速に悪化し、ASEAN諸国は、南中国海問題について絶えず中国を非難し、中国に対抗すべくある種の連合体制の姿勢が顕在化している。3つ目は、国際社会の中で、中国に対する新たな消極的世論が現れ、欧米のメディアは、中国崩壊論や中国脅威論、中国経済責任論などをこぞって口にし、さらには「中国傲慢論」や「中国強硬論」といった理論まで打ち出したことである。中国が国家の主権を守るためにやむをえず反撃行動に出ると、中国は謙虚さに欠ける攻撃的な行動に出たと見なされてしまう。4つ目は、中国が世界一の輸出大国となり、また世界一の外貨準備高を誇る国となるにつれて、自然と貿易摩擦と紛糾の渦に巻き込まれていったことである。WTOの調査によって処理された反ダンピング法案の中でも、中国に関する法案は75%を占めている。
中国の台頭に対する外部世界の反応は総じて3つに分かれる。1つは、中国の台頭を心から歓迎する態度である。このような考えを表明するのは、地理的に中国から比較的離れており、経済発展や国力の面で他よりも劣る国で、大部分が、アフリカ、中南米、中東、東欧地域に位置している。2つ目は、中国の発展に対する曖昧な態度である。中国との経済協力や戦略的な調和関係の構築を望んではいるが、中国の急速な発展と利益の拡張に危機感や不安をも抱いている。3つ目は中国の台頭に対して敵対心を抱いているという態度である。これらは更に3つのタイプの国に分けられる。1つは、現存する国際的な秩序によって既得利益を得ている国、2つ目は中国との間で、歴史的または現実的な問題を抱える周辺諸国、そして3つ目は中国の際立った成長に嫉妬心を抱く新興大国である。中国の台頭によって、これらの国は中国に対する警戒心や対抗姿勢をエスカレートさせ、また相互間におけるある種の連合体制が顕在化しており、客観的に見て、これが中国の外交上での問題となっている。
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