金燦栄(中国人民大学国際関係学院副院長)
2010年、国際情勢には引き続き複雑で深刻な変化が起こったが、中でも、中国の変化は国際情勢の変動に大きな影響を与えた。世界的な局面の変動だけでなく、大国との関係調整においても、中国は自国の烙印を深く刻んだといえる。改革開放30年余りにわたる経済成長や経済力の蓄積を経て、中国の国としての能力は、ある種の質的飛躍を遂げた。2008年の北京オリンピックから2009年の国慶節の閲兵式、そして2010年の上海万博、アジア競技大会に至るまで、中国は、政治動員、科学技術のイノベーション、軍事の近代化などの面における能力を発揮した。また、頻発した自然災害や「百年に一度」といわれる世界金融危機への対応は、中国の持つ強大な抵抗力を顕著に表している。8月15日に、日本政府が発表したデータによると、今年の第2四半期に中国のGDPは日本を超え、世界第2位の経済体になったという。国内では評価が高くないが、国際社会からすれば、これは間違いなく中国が超大国に準ずる国となったことを示しており、中国の台頭は客観的な現実であり、遠い中国の未来の姿ではない。
このような情勢の変化は、2つの側面的変化をもたらした。1つは、中国の国際的地位がはっきりとした形で高まり、自然に世界の注目を集めることになったという点である。例えば、世界銀行の割り当てに関する改革の中で、中国の投票権は2.77%から4.42%に上昇し、アメリカ、日本に次ぐ第3の大株主国に躍り出た。また、中国の国際通貨基金(IMF)の中での出資割当は、2.389ポイント増の6.394%となり、出資比率が第6位から第3位に引き上げられた。これと同時に、国際社会では「中国モデル」に関する討論が巻き起こり、果ては「中国が世界を支配する」などといった声まで聞かれるようになった。もう1つの側面は、中国が国際的な矛盾の焦点になってきているという点である。これは、世界第2位という地位がもたらしたものである。今年に入って以来、中国は外交面において一連の問題に直面し、中米関係の悪化、頻発する中国と周辺諸国との矛盾、国際世論における中国のマイナスイメージなど、すべては、客観的に見て世界第2位という現状にかかわっている。この「大にして強からず」という戦略的に脆弱な時期を如何にしてやり過ごせばよいのか。中国の戦略能力と外交における知恵が試されている。
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