李青燕(中国国際問題研究所国際戦略研究部研究員)
2010年、国際情勢は総体的に安定していたが、国際金融危機による深層的な影響と新興勢力の台頭という要素に突き動かされ、大国の関係に重大な変化が生じ、とくに米国やロシア、欧州連合(EU)などは対外戦略を大幅に調整した。ポスト危機の国際政治をめぐる枠組みは、力が相対的に均衡した方向へと発展し、安全に関する枠組みはさらに多元化し、国際的な枠組みはより深い発展に向けて調整された。
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2010年12月7日、クリントン米国国務長官(中央)と金星煥(キム・シンファン)韓国外交通商部長官(右)、前原誠司日本外務大臣はワシントンでの米日韓外相会合後、記者会見を行った (張軍撮影) |
(1)米国はアジア太平洋地域に対し戦略的投入を明らかに拡大し、この地域における米国の戦略的配置を強化した。
アジア太平洋地域の総合力が増強され、とくに経済発展が加速し、新興勢力が台頭し、この地域とその役割のグローバルな重要性が絶えず高まるに伴い、オバマ政権はグローバルな戦略的調整を行い、アジア太平洋地域は米国が戦略的に優先する目標となった。米国はアジア太平洋地域に対し戦略的投入を拡大し、外交や軍事、経済手段を総合的に運用することで、この地域における問題に全面的に介入。東北アジアにおいて、米国は日韓との関係を強化し、日米・米韓同盟を強固なものにした。今年に入り、オバマ大統領をはじめ軍・政府の高官が、普天間基地問題で低調な状態に陥った日米関係を修復しようと相次いで日本を訪問し、「揺るぐことなく」日本を防衛するとの姿勢を表明した。菅直人政権も日米関係を軸とする「現実主義」的な外交の旗を掲げ、米国がアジアの問題にさらに手を挟むことを明確に支持したことで、日米同盟はより深化した。哨戒艦「天安」や「延坪島砲撃」事件によって米韓関係は昇華し、米韓は外相と防衛相による「2+2」会談をスタートさせ、両国の戦略的同盟を強化した。米国はさらにこれを契機に米韓軍事演習の回数と規模を増強するとともに、「朝鮮の脅威に対応する」米日韓による三角同盟の構築を提起した。
東南アジアにおいて、米国は積極的に東南アジア諸国連合(アセアン)に接近し、アセアンとの協力関係の強化を加速するとともに、インドネシアやベトナムなどとの新盟友関係の確立に一段と力を入れた。米国は「アジア太平洋地域の常駐大国」という身分で東アジアサミットに参加し、アジアにおいて「指導」的役割を発揮すると強調。また米国は「メコン川下流行動計画」を作成し、カンボジアやラオスなど4カ国に1億5000万ドルの発展援助資金を提供すると同時に、メコン川委員会を通じて義捐金を贈るなど、メコン川流域の水資源をめぐる紛争に介入した。米国はさらに「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)交渉に参与すると強調するとともに、TPPの東アジアへの拡大を積極的に推進し、ベトナムやマレーシアなどの加盟を優先的に考慮することで、TPPをアジア太平洋地域の経済一体化を主導する舞台、実行可能な手段にしようとした。
南アジアにおいては、米国はアフガニスタンにおける反テロ戦争による連累から脱却しようとし、タリバンに対し軍事的攻撃と政治的瓦解という2種の策略を講じたほか、カルザイ政権とタリバンの和平交渉を推進するなど、政治手段を通じた早期の戦争終結に尽力した。さらに米国は、パキスタンに反テロ対策の強化を促すとともに、両国の閣僚級の戦略的対話を通じてパキスタンとの協力関係を強化。同時に、インドとの関係も昇華させた。オバマ大統領は今年インドを訪問した際、双方の関係を「21世紀におけるグローバルな戦略的パートナーシップ」と位置づけ、インドの「常任理事国入り」を支持すると表明するなど、インドを米国のグローバルな戦略的配置における重要なパートナーと見なした。
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