中国政府の猛反発の理由について
台湾への武器売却問題はずっと中米関係を悩ませている。統計によると、1950~78年にかけて、米国が台湾地区に贈与、売却した武器装備とその他の軍事援助は累計100億ドル以上となった。1979年中米両国国交樹立後、米国の対台湾武器売却の問題を解決するため、中米両国は1982年、「8.17」コミュニケを発表し、米国は「台湾に売却する武器の性能と数量は、中米国交正常化後の数年間に提供してきた水準を越えず、徐々に台湾への武器売却を減少し、最終的に売却を停止する」と明確に約束した。
しかし、実際のところ、米国政府は本心から「8.17」コミュニケを遂行したことがない。台湾への武器売却がエスカレートし、数量と金額がますます大きくなっただけでなく、武器の性能もますます良くなってきた。中国政府は米国の対台湾武器売却に一貫して反対し、米国が3つのコミュニケ、とりわけ「8.17」コミュニケの原則を恪守し、台湾への武器売却を停止することを求めているが、米国は態度を転換させることがないようだ。中国からの不満は反対と抗議の中で積み重なってきた。今回の米国政府の行為は中国政府からの強い反対に遭った。米国の挑発行為に対して、学界はすでに実質的な反発措置を打ち出し、一部の学者は「今こそわれわれが米国に向けてルールを作る時がきた」とまで指摘した。
中国政府が今回の米国の行為にこれまで以上に強硬な姿勢を取ったのは、次の点を考えてのことだ。
第一に、国家利益と国際法に対する中国の認識に重要な変化があった。米国の対台湾武器売却は中国の核心的利益を損ない、国際法のルールにも違反したものだ。30年にわたる改革開放を経て、現在の中国は国際政治のルールを熟知し、さまざまな外交手段を柔軟に利用して現代外交を行う大国となった。中国は他国との交流において次の2つの原則を恪守している。1つは両国が協力しようとするのであれば、相手の核心的利益を尊重しなければならないことで、もう1つは両国が法的文書を作成したら、自発的に条項の定めに従って相応の義務を履行しなくてはならないことだ。1つの国には多くの利益がある。これらの利益は重要さによって異なったレベルに分類されるが、核心的利益として明確に確定されたものはたいてい数項目しかない。中国政府は外交政策の策定において、終始一貫して核心的利益の拡大による改革開放の大局や各国との友好協力への影響を極力避けるように努めてきたため、核心的利益の確定には特に慎重だ。
中国政府は台湾問題を国の核心的利益として明確に確定し、台湾問題において米国からの尊重を求めたことはここ数年中米関係が良好に発展してきたカギである。3つのコミュニケは終始一貫して中米関係の基盤であり、中国政府と国民は米国の「台湾関係法」を受け入れられず、「台湾関係法」を「8.17」コミュニケの上に置く米国の行為に強い不満を示した。このため、米国の対台湾武器売却に対する中国の立場はよりしっかりと定まり、態度はより断固としたものになった。
第二に、改革開放30年間の急速な発展につれて、中国の「国家——社会」の力の構造に変化が生じ、中国の政治指導構造も徐々に「技術官僚の集団指導体制」に変わってきた。昔の「強国——弱社会」の構造が「強国——強社会」という新型構造に取って代わりつつある。社会層の力が政府の政策決定に与える圧力が増大し、最高指導層の個人による単独な政策決定の権力も弱まったため、外交政策の決定者は民意を尊重し、民意に従わなければならなくなった。世界が急速に発展している中、中国の内外政策が相互に影響し合う問題は過去と比べてさらに際立ってきている。情報化時代において、外交活動は過去のいかなる時期と比較してもより公開かつ透明になり、中国の3億8400万人のネットユーザーの出現は外交と民意を表わす新しい力となった。中国の外交はより幅広く注目を受けると同時に、内部と外部政策との相互影響もますます国内各方面からの制約を受けるようになった。
第三に、中国の総合的国力の増強につれて、中米間の国力の比較は10年前とだいぶ様変わりした。昨年発生した金融危機は国際政治の枠組みに深い影響をもたらし、世界の多極化は急速に進み、米国の一国覇権主義という夢は叶えられなくなった。しかしながら、金融危機の中、中国の経済は比較的急速な成長を保ち、世界における影響力も向上してきた。危機が続いている中、米国は依然として中国の助けと協力を必要としている。技術面では、中国は米国を制約する力を持ち、選択できる政策も多くなった。
以上の分析によれば、われわれは中国の今度の対台湾武器売却での反応は過去と比べるとさらに実質的な意義があることを排除しない。
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