まず広東、山東、浙江、蘇州の4省で試行
──旅行券の発行は各地方の自主的行為なのか、それとも国の観光を主管する部門が統一的に行っているものなのか。これらの観光優遇策が今のところ広東、浙江、江蘇、山東などに集中しているのは偶然なのか、それとも特別に配慮されたものなのか。
これらの省で行われているのは偶然ではなく、経済発展の程度と密接に関わっている。旅行券の資金源は地方財政および企業提携による割引であり、現地の住民のニーズもある。この4省は「国民休暇計画」の先行試行地区でもあり、当初テストケースを進める場所を確定する際にもこのような関連要因を考慮した。
──いまホットな話題となっている「国民休暇計画」について、国家観光局は早いうちから検討し始めているそうだが、正式にはいつスタートするのか。
この大きな課題が明確に提起されたのは07年だ。08年11月の上海国際観光交流会の席で初めてそのニュースが伝わり、業界内や小規模な範囲での下準備の活動が公になり、世論の関心を引き起こした。
国民休暇計画は、「国民旅行計画」あるいは「国民休暇綱要」とも言われ、95年に国務院が発表した『全民健身計画綱要』に似たものだが、社会的な反響はさらに大きい。各メディアの反響を総合すると、賛同するものも疑問を呈するものも、核心的な問題はこの計画が登場する「時機」に集中している。
疑問を呈するのはよいこと
──以前の『全民健身計画綱要』が各界からこぞって賛同を得たのとは違って「国民休暇計画」は見方がまちまちだ。疑問を呈する声があるだけでなく、反対の声も上がっているが、これをどう考えるか。
さまざまな声が聞かれるのはよいことで、政策決定者がより周到に考え、より明晰に分析するようになり、この計画をいっそう完ぺきで実際的なものにするためにプラスとなる。私個人の考えでは、人々がこの計画に関心を寄せる主な原因は次の4つがあると思う。
1、 実際の中身を知らずに計画の名称だけで新鮮な感じを抱いていること。「国民」という文字によって、人民全体のことを考慮したもので個人の利益に密接に関わるものだと思うのだろう。そして「休暇」という文字によって、楽しい感じになり、わくわくしてきて、「計画」という文字ですでにタイムテーブルに載っているもので実現が近いと考えるのだろう。だが、その中身と背景にある精神はあまり理解されていない。
2、 敏感な反応。勤勉は中華民族が一貫して善しとしてきた社会的心理で、中国の伝統的な文化の中で「休暇」と「勤勉」とは相対するものであり、人々は「勤勉」については称賛するが、「休暇」が社会意識の主流にまでのぼりつめることは極めて少なく、せいぜい中間的性格の言葉でしかない。そのため、「休暇」を国民計画にするとなると、多くの人は覚悟ができていないわけで、疑問を呈するのは価値観から発する本能的反応と言えるだろう。
3、 時機に対する懸念。世界的な金融危機による影響で当面のマクロ経済情勢は厳しく、企業や個人の利益、収入は大幅に減っており、多くの人が休暇を語るには時機が適切でないと考えている。
4、 現実的な基礎。休暇、旅行などの消費には「ヒマ」と「カネ」という基礎が必要だが、いま「ヒマ」には弾力性が欠けている。法定休日にはすでに定数があってさらに増やすのは難しいし、有給休暇は実行するのが難しいからだ。比較的裕福な地域も一部にあるものの、1日1人当たりの出費が1ドルを下回るという世界共通の貧困基準からすると中国の絶対貧困人口は膨大だ。
──多くの懸念があるにもかかわらず、なお検討を急ぎ、計画を実施しようとするのはなぜ?
懸念があるということは、これを避けたり諦めたりする必要があるということでは決してない。肝心なことは、これがどのような計画であるのかを理解し、真の意義を明確にし、「国民休暇計画」が目標とする方向性を明らかにすることだ。
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