13年かけて、7回にわたって審議されてきた物権法案が3月8日、第10期全国人民代表大会(全人代)第5回会議に審議のため提出された。この法案は「国や集団、個人の物権を平等に保護する」と規定している。中国の法学者らは「中国の特色を持つ物権法案が採択されれば、社会主義の市場経済体制を完備し、社会主義の調和のとれた社会の構築を加速するのにプラスとなる」と見ている。
第10期全人代法律委員会の委員で、最高人民法院諮問委員会の李国光副主任は「この規定は、異なる物権の所有者を平等に保護する原則と現行憲法の精神を具体的に示すものである。同時に、国有財産流出の状況に対処するため、国有財産の保護を強化するとしている。それは現段階における中国共産党の農村での基本政策を全面的かつ正確に反映したもので、広範な農民大衆の利益を擁護するとともに、現実の生活において差し迫った、適正が必要とされる問題について、様々な利益関係の協調を図り、社会の調和を促進しようとするものだ」と強調した。
物権法案によれば、国は公有制経済を強化し発展させ、非公有制経済の発展を奨励し、支持し指導する、としている。また、国有資産について明確な規定を設けるとともに、5項目の保護強化措置を打ち出した。長期にわたって保障された土地使用権を農民に与えるために法案は、耕地や草地、林地の請負期間が終了した場合でも、請負経営者は国の関係規定に基づいて引き続き請け負えると規定している。
個人の合法的財産については、法的な保護を受け、いかなる事業体や個人であれ、これを占有や略奪、損壊することを禁じると規定。王兆国・全人代常務委副委員長は「この規定は財産を作り累積する上での大衆の積極性を引き出し、社会の調和を促進するのにプラスとなる。集団所有の土地や都市・農村部住民の住宅を徴収することは、幅広い人民大衆の切実な利益にかかわり、社会が広く関心を寄せているところのものでもある。このため、法案では徴収による補償の原則と具体的内容に関する規定を設けた」と説明した。
中国社会科学院学部委員の王家福教授は「中国はかなり長い期間、所有制のみを重視し、所有権は重視せず、物権法すらなかった。その結果、程度の差こそあれ、国や集団と個人の財産は侵害され、ひどい場合は損なわれることさえあった」と指摘。
その上で王家福教授は「改革・開放以来、最も大きく、最も重大な変革の1つは、中国の特色を持つ社会主義の物権制度が徐々に制定され、国と公民の財産権が保護されるようになったことである。これによって、この20数年の間に、13億もの人たちに富を創造し、富を大事にし、富を蓄積しようとする意欲が呼び起こされた」と強調した。
また王兆国副委員長は、改革が深化し、開放が拡大し、社会主義の経済、政治、文化が発展し、社会建設が進展するにつれ、「中国の特色を持つ社会主義の物権制度をさらに完備しなければならなくなってきた」と指摘する。
物権法が何度も審議されたことは、中国の立法史でかつてなかったことだ。物権法の起草作業は93年に始まり、05年7月に法案の全文が公表された。全国から寄せられた意見書は1万件を超える。
今大会で3000人近くの代表は法案を審議した上で、採決を行う。
★物権
財産権の1つ。一定の物を直接支配する権利。所有権・占有権・地上権・永小作権・地役権・質権・抵当権・留置権・先取特権など。
「北京週報日本語版」2007年3月14日
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