李所長:現在の実施効果を見れば、この制度にはよい面もあれば、よくない面もあるとしか言えない。
よい面とは、大学教授や小学校の校長など、社会的責任感があり、進んだ理念や民主的な意識を持つ資質の高い人が住民委員会に入る上でプラスとなることだ。これまで住民委員会のメンバーは教養のそれほど高くない定年退職者が主体だった。
よくない面とは、一部都市では、住民委員会は「町内会」の役割をほとんど果たせず、名ばかりのものとなった町内会もあるほどだ。例えば、東部の浙江省寧波市海曙区でこの制度を実施した当初、「町内会」の選挙は非常に激しかったが、3年後の交代選挙が間近になった今、選挙に意欲のある人はほとんどいなくなった。「町内会」の役割が果たせなかったことが原因だ。従って今後、「町内会」により積極的に役割を果たさせるように、制度を改めることを考えるべきではないか。
実は、深圳市がすでに「第3の道」を模索している。今年3月から一部コミュニティーに政府の出先機関を設置し、政府の任命を受けた幹部がコミュニティーの行政事務を取り扱うようになった。政府と「一線を画した」住民委員会は住民にかかわる内部的な問題しか担当しない。この改革が実行されて日がまだ浅いため、はっきりした効果は見られておらず、さらに言及するのは控えたい。
記者:この制度は民主の発展に実質的な意義はあるのか。
李所長:実質的な意義は非常に大きいと言うべきだろう。民主化は政府と民衆の間のことである。この制度を実施している地域、特に私営経済が発達した地域では、「小さな政府に、大きな社会」(政府の職能が縮小されて、社会の自治機能が拡大した社会)の意識を形成する上でプラスとなるからだ。
都市部の住民は長年間にわたり「国有単位」(政府機関・事業体・非営利機構など)に所属する「単位の人」であり、単位から政治や経済、生活などに関するすべての「資源」を供給され、コミュニティーでの生活は単位の人にとってただ生活上の副次的な一部にすぎなかったため、コミュニティーの事務に関心を持ったり、参加したりすることはなかった。しかし、市場経済の発展によって、多くの国有企業が破綻する一方で、非国有企業が多く生まれたことから、数多くの単位の人は「社会の人」へと変わっていった。社会の人はますますコミュニティーの事務に関心を寄せ、自らを「コミュニティーの人」と見なすようになってきた。議行分設制度はとりもなおさず、社会の人が集中するコミュニティーで推し進められてきたのだ。
民主は一種の生活様式だ。民衆は政府を監督し、コミュニティーの管理に参加することを生活様式にし、問題があったら、話し合いを通して解決すべきだ。政府も矛盾や争いにぶつかった場合には、民衆と話し合いを通して決定し、徐々に話し合いや多数決を制度化させているべきだ。こうすれば、民主は生まれてくるだろう。
記者:農村に比べ、都市部の末端部での民主化は遅れている。障害があるのではないのか。
李所長:民衆はすでに民主化を推し進める主要な原動力となっている。民衆が政府を監督し、腐敗に反対し、法秩序を整備するなどは、民主の発展方向に合致するものだ。
また、政府の推進も民主化を実現させる重要な要素であり、現行の体制に必要なものでもある。それがなければ、民主化の実現は不可能だ。だが、末端部で民主化が進められたからには、徐々に政府の役割は弱めるべきだ。さもなければ、民主化プロセスは遅延することになる。
|