訪日中のヘーゲル米国防長官は4月5日に、安倍内閣の憲法解釈の見直しによる集団的自衛権の解禁に対して、「歓迎」を表明した。安倍首相は2013年2月の訪米期間、同問題で米国側の支持を得ようと働きかけたが、オバマ大統領は「中国を刺激する可能性がある」ことを理由に、コメントを避けた。それでは、米国はなぜ一年後に、ヘーゲル長官を通じこの敏感な問題で態度を示したのだろうか?
米国の態度は、アジア太平洋リバランス戦略の需要によるものだ。オバマ大統領はアジア太平洋での兵力配備を強化したいが、金融危機後に実力が失われた米国は、自力で同戦略を完了できなくなった。日本の集団的自衛権の解禁は、自衛隊がいつでも「自衛」を「他衛」に変えられることを意味する。米日同盟の存在により、日本は米国により戦争に巻き込まれることが不可避だ。これは米国の東アジア、さらには世界における抑止力を強化する。米国は同盟国の日本の支持を得て、日増しに課題が増える東アジアでの覇権を固めるため、安倍首相を始めとする日本の政界を握る右翼勢力を引き締めると同時に、これを利用しようとしている。ヘーゲル長官の今回の発言は、この目標によるものだ。
米国は朝鮮半島情勢への対応を、日本の集団的自衛権解禁の主な口実としている。これは一部の原因ではあるが、すべての原因ではない。米国の態度は中国の台頭への対応、中日間で「バランス」を取るための戦略的なものだ。中米は衝突も対抗もしない新型大国関係を構築することで合意しているが、米国は日増しに拡大する中国の実力、特に東アジアにおける地位の向上を常に警戒している。米国は東アジアの覇権を握るため、東アジアの安定を願いながら、東アジア内部の各国が牽制しあうことで権力のバランスが取れることに期待している。そのため米国は中日が開戦することを望まないが、両国がさまざまな係争により「口論」に陥ることを喜んでいる。中米が新型大国関係の構築で合意に達する前に、米国は中国を刺激し大局を損ねることを回避する必要があった。中米関係の新たな枠組みが構築されると、オバマ大統領はいかに中国のバランスを図るかという問題について検討し始めた。中国の平和的な発展を遅れさせるため、米国はパンドラの箱を開き、日本の右翼勢力により中国の台頭を牽制しようとしており、安倍首相が平和憲法のレッドラインを超越することを認め始めてもいる。
米国はシンクタンクの発達した、国際問題の専門家と戦略家が集まる国だ。しかし大国が原則に関わる問題を巡り過度に戦略的な計算を進めた場合、あまりに賢明すぎることにより深刻な誤解に陥る可能性がある。崔天凱駐米中国大使は昨年米国に対して、「日本という石で自分の足を傷つけないように」と警告した。日本の集団的自衛権の解禁を支持する米国の戦略的な計算は賢明に見えるが、パンドラの箱を開けた結果については認識不足で、日本軍国主義の勢いを助長することの巨大なリスクを過小評価している。第一次世界大戦後、西側の大国の宥和政策は、「石で自分の足を傷つける」という痛ましい事例となった。超大国の米国が、中国の哲学と世界の歴史から教訓を多く汲み取り、日本の右翼勢力に戦車に括りつけられてから後悔しないことを願うばかりだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年4月8日 |