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日本館長:上海万博パビリオン訪問で感じたこと

2010年上海万博日本国家館館長 江原規由

桂香(モクセイの香り)が秋風に乗っています。色とりどりの秋の草花が咲いています。万博会場内はいつも季節感にあふれています。万博も閉幕まであとわずかともなると、今まで見えなかったものが見えてくるものです。

人気パビリオンにて

先日、人気パビリオンをいくつか参観する機会がありました。どのパビリオンも近未来を指向した展示やアトラクションがある点で共通していました。例えば、あるパビリオンでは、2030年の都市において、車がどんな役割や機能をもっているか、コンピューター・グラフィックの大画面に観客を引き込んで紹介していました。また、近未来都市がどうなっているのか、過去から現在への都市の変遷を交えながらビジュアルに見せているパビリオン、美しい地球の未来のために工夫を凝らしてメッセージを送ろうとしているパビリオンなどがありました。

そこで紹介されていた近未来都市における共通項は、科学技術の発展、そして、環境と人にやさしい社会生活であったようです。そこに展開する世界は、けっして白昼夢ではなく身近な夢を演出していました。上海万博のテーマである「より良い都市、より良い生活」の近未来の姿を垣間見た思いがしました。

万博の醍醐味

中国では、目下、都市化が急速に進展しています。これを加速させているのが交通網(鉄道、航空、道路網など)の整備・高速化です。特に、科学技術の粋を集めた高速鉄道網の整備(注)は、都市間の移動時間を縮め、都市化に大きく貢献すると考えられます。

また、世界と中国の都市間の時間的距離も、万博会場の各国・地域のパビリオンの移動時間ほどとはいかないまでも、急速に縮まることになると思います。時間的距離を尺度にした地球儀を作るとしたら、中国は日々年々急速に小さくなっていくのではないでしょうか。

こうして、世界と中国の都市間で往来が増えるようになれば、時間的距離同様、中国と世界との心理的距離がさらに縮まり、地球上でお互いが身近な存在として意識されていくようになるはずです。

上海万博会場で、近未来の都市生活のヒントを得、中国と世界、何より、中国と日本がますます身近になれる環境が眼前にあることを知り、万博の醍醐味を実感した思いです。

注 高速鉄道網の営業距離は世界一、上海―杭州間の試験走行速度は時速416.6kmで世界最速を更新(2010年9月)。また、2011年末営業予定の上海―北京間の高速鉄道の最高運行速度は時速380km(最高試験走行時速420km)を予定している。

人民中国インターネット版 2010年11月3日

 

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