王宏図氏は上海出身の作家で、上海生まれの上海育ち、そして海外の都市で生活した経歴も持っている。もちろん、王氏の経歴はこれに止まらない。しかしこうした国内と海外の生活を繰り返してきた経歴は、他都市との比較の中で上海という都市を読み解くのに役立っている。
「私は1982年に復旦大学に入学し、1989年に大学院修士課程を修了した。専攻は比較文学だったため、中国と西洋の相互文化交流に特別敏感だ。卒業後はまず上海社会科学院に5年間勤め、1994~96年に米国インディアナ大学に留学、帰国後は復旦大学中国語文学部で教員を務めた。2004年、日本の京都外国語大学の客員教員となり、2007年11月から2009年11月まではドイツのハンブルグ大学孔子学院の中国側学長を務めた」。
「私は計5年間を外国で過ごした。この間、上海は中国の他の場所と同様に、驚くべき変化を遂げた。1991年に最初に海外に出たのは日本での国際比較文学会議に参加した時だったが、当時、東京と比べると上海はまるで崩れ果てた小さな町のようなものだった。でも2004年に再び日本に行った時は、上海は再び活力にあふれ、国際的大都市としての地位と風格を取り戻していた。ここ20年の上海の発展は、『目がくらむ』という言葉で総括できる」。
生粋の上海人として、王宏図氏はこの都市に極めて強い帰属感を持っている。それは氏の多くの作品に反映されている。氏の小説を読めば、作品中の主人公は、実はこの沸き立つような賑やかな都市そのものであることに気づくだろう。
作家の張生氏が王宏図氏の小説『Sweetheart ドアを間違えてノックしたのは誰?』の書評で述べているように、王氏のこの小説は上海の表象に対する表面的な構図や描写を越えて、あたかも真珠や玉をあしらったつややかに光輝くカーテンを開けるかのように、直接上海の扉を開き、私たちにその内に秘められた本当の姿をかいま見せてくれる。
こうした超級の都市に対する描写は、数年前に王氏が深圳で行なった講座ですでに触れられている。「都市は魅力的である一方で、同時に恐ろしくもある。鉄筋コンクリートの林は多くの人の夢を無残にも打ち砕く。……都市はグローバリゼーションの過程で実質的な経済成長エンジンの役割を果たし、しかもその趨勢はますます加速しつつある。中国は今急速な都市化の時期に入っている。都市化が進むにつれて、都市はすでに常態と化し、世界全体が一つの大きな都市へと変貌しつつあると言っていい」。