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上田多門氏「『技術流出論』は日本の中国に対する誤解によるもの」
  ·   2021-11-19  ·  ソース:人民網
タグ: 研究;技術;中日交流
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日本メディアで最近、なぜノーベル賞級の科学者が中国に行ってしまうのかを問う報道が広く注目されていると聞いている。最近、私もTBSテレビの取材を受けたが、その後の世論での反響についてはフォローしていない。私が以前勤務していた北海道大学は日本のトップレベルの大学だが、研究環境は良いとは言えなかった。私はずっと日本政府が科学研究にもっと予算を投じてくれることを望んでいる。これがTBSテレビの取材に応じた理由の一つだ。(上田多門・深セン大学特聘教授、日本・土木学会2022年度会長/環球時報に掲載)

私と中国との付き合いは非常に長い。1996年頃、大連理工大学の一人の教授と知り合う機会に恵まれた。その教授の紹介で、2000年に同大学から北海道大学に留学した優秀な中国人留学生を指導することになった。それ以降、さらに多くの優秀な学生を受け入れた。こうした学生たちは卒業後、浙江大学や香港理工大学などで教職に就いている。そのおかげで私は中国の大学とのつながりを深めることができた。

私は中国の研究環境に過去20年余りで起きた極めて大きな変化を目の当たりにしてきた。2011年から、大連理工大学や浙江大学、哈爾浜(ハルビン)工業大学や深セン大学などで客員教授となり、1年のうち1-2ヶ月は中国で勤務してきた。5年ほど前に、中国の大学から専任で来てほしいと言われたが、その時はまだ迷いがあった。しかし、2年前に再び中国に来た時には、すでに状況が変わったとはっきり感じた。

深セン大学の研究環境は非常に素晴らしく、日本の大学が揃えられない先進的な設備があり、周りの研究チームの資質も非常に高い。日本国内には今でも先端技術の中国流出を懸念する論調があるが、実際には、少なくとも私がよく知る土木分野においては、研究設備においても、いくつかの研究分野の成果においても、中国はすでに日本をリードしている。

いわゆる「技術流出論」というのは、日本が中国を誤解しているのだと思う。今や、中国の大学が日本の研究者を招聘する目的は、彼らに知識や技術を中国に伝授することを望んでいるからではない。中国の大学は世界から優秀な人材を招聘しており、その中でたまたま優秀な日本の科学研究者が見つかったということにすぎない。彼らが中国に来る理由は様々だが、それは最良の選択をしたら中国だったということであり、多くの人材が米国を選ぶのと変わらない。

中国で土木分野を研究する場合、日本政府が支給するより多くのプロジェクト経費をもらうことができ、私が興味を抱いている研究テーマは中国でのほうが実現しやすい。ということであれば、研究環境がより良い国に行きたいのは当然の成り行きだ。

2019年に北海道大学を退職し、深セン大学の専任になった。中国語は話せないが、英語で問題なく仕事ができる環境がある。給与は以前より手厚くなり、好きな研究にも打ち込める。中国に来る機会に恵まれてとても幸運だったと感じている。深セン大学の同僚や元学生と共同で行っている研究は成果を出し続けており、大学側との契約は2024年までとなっている。契約満了時にまだ一緒に研究ができるのであれば、研究を続けていきたいと思っている。

現在、若手の学者が日本国内で仕事を見つけるのは難しい。これは日本全体が直面している問題だ。日本は博士の学位を増やす政策をとったが、それと連動した研究者の就職先は増えていない。私が勤務していた北海道大学のようなトップレベルの大学でも、専任教師のポストはかえって減っている。多くの若手の日本人学者にとって、中国の大学で働ける機会があるのなら、それはとても幸運なことだ。中国の研究者は優秀だし、多くの海外人材も研究環境がより良い中国に来ることを望んでいると思われる。中国での競争は間違いなくさらに激化していくだろう。

実際、研究者だけでなく、中国でのキャリアアップを目指す各業界の日本人はますます多くなっている。これは年齢や経歴、職業とは関係ない。中国はますます多くの日本人が活躍する舞台になりつつある。

中国人は競争意識が強く、目標達成のために進んで努力し奮闘する。これはいい事だし、今の日本人に足りない部分でもある。しかし、競争を勝ち抜くために、中国人は「数」を強調しすぎるところがあり、研究成果は「数で勝負」しなければならないと思っている。一部の中国人研究者が研究をするのは、成果を出し、論文を書くためであり、それで研究予算を申請するということを繰り返している。これに対して日本人の研究者は、本当に好きだという理由で科学研究の道に入ったという人が多い。現時点で、日本ではすでに25人(日本国籍に限る)のノーベル賞受賞者が生まれている。将来的には、中国人の学者の中にも受賞する人が出てくるに違いない。しかし、もし現在のような状況がずっと続いていけば、中国が受賞者数で日本に追いつくのはたやすいことではないだろう。

中国の論文数はすでに世界でトップになっているが、より質を重視した研究環境を作る必要がある。数を強調することは、必ずしもノーベル賞のような真のトップクラスの賞をもたらすわけではない。私の中国に対する理解では、中国が何かをしようとする場合、国を挙げて取り組めばうまくいく。中国が現在の研究環境を改善したいのであれば、それも問題なくやり遂げることができると思う。(編集AK)

「人民網日本語版」2021年11月18日

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