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メールマガジン 6月号  
村上春樹のなかの中国

 

──村上が中国へ来たのは十数年前のことです。大連、長春、内蒙古を訪れたらしい。私が覚えているのは、彼が長春動物園でパンダを捜したことと虎の子を抱きしめて写真を撮ったこと。でも、彼の主な目的はノモンハン事件の跡地に行くことだった。大江健三郎氏のように、彼がまた中国へ来るかどうかわかりませんが

村上は中華料理が食べられず、この前中国に来たときはつらかったと言っているので、敢えて来るようなことはないでしょう。でも、私は、これは口実だと思っています。村上は話をするのが好きではないが、いったん舞台に押し出されれば、やはり自分の考え方を率直に語るはずだと思う。最近、彼がエルサレムで行った講演もその1つの例です。中国に対して村上は今のところまだこのような状況は避けたい、だから来ないことを選択しているのです。そのほか、父親と歴史という理由もあり、彼の中国に対する思いは複雑なはずです。やはり引き続き見守りましょう。

──今年の夏には彼の新作『1Q84』を読むことができます。引き続き戦争が話題になると聞いており、再び中国が描かれる可能性もあるようです。今日のお話で、村上は、孤独で自由な若者が都市で「いかにモダンな暮らし方をするか」という手本を提供する一方、彼の小説には歴史に対する思考やより厳粛な文学への挑戦が隠されていることをさらに確信しました。日本でも中国でもみな、古い伝統がすでに崩壊し新たな基準がまだ確立されていない、かなり混乱した社会の中で暮らしています。私たちはどのようにして「正しい」方向性を見出すことができるのか。これが、村上作品における大切なメッセージなのでしょう。今日はお時間をいただき、ありがとうございました

私もあなたとお話しできて嬉しかったです。

(冒頭の村上春樹の言葉は、『中国時報』紙1998年8月5日付の洪金珠記者による『村上春樹的霊魂里住着中国印記(村上春樹の心に潜む中国の記号)』からの訳出)

「北京週報日本語版」 2009年5月20日

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