◇「セロ弾きのゴーシュ」の心境◇
東京中国歌舞団の二胡教室発表会は、東京・亀戸の「カメリアルホール」で行われた。今年3回目だが私は初めて参加した。「斎藤が本当に二胡なんか弾けるのか」と、疑いながらやって来た大学時代の友人5人を含め観客は100人ほど。
合奏は「大海啊故郷」「浜千鳥」「吐魯番的葡萄熟了」「夏の思い出」「喜洋洋」と日中の曲目を合わせて演奏した。南京では先生について2人だけだったが、この発表会では10人を超える人たちと合わせなければならない。音程やテンポ、それに左右に動かして弾く弓の動きも全員と合わなければならない。指揮をしている劉錦程団長の指揮棒も注視しなければならない。発表会の演奏は思っていた以上に緊張した。演奏する仲間の多くは女性で私よりみなうまかった。私は宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」にあるあまり上手でないゴーシュのような心境だった。
童話の中のゴーシュは、毎晩やって来た三毛猫、カッコウ、子ダヌキ、ネズミの母子のおかげでセロ弾きの名手になった。私は仲間の弓の動きと合うことや、音程を狂わず速いリズムにもついていけるようにするのが精いっぱいだった。それでも、日本と中国の曲を交互に演奏していると、音楽に国境はなくどちらも素晴らしい曲だと感じた。とくに二胡で演奏する日本の歌は、日本人にとって新鮮な感触をもたらしてくれる。この感覚は演奏している側も、会場で聴いてくれる人たちに共通しているように思えた。
二胡教室の発表会は今年3回目となり、観客も次第に増えてきた (筆者写す)
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